浄化槽の近くにブロワという機械が設置されています。
ブロワは、浄化槽の機能維持にとって大切な機械です。
ブロワは何をしている機械なのか。
その設置例と取り扱い上の注意点についてご説明します。
はじめに
浄化槽の近く、建築物の壁際に「ブロワ」が設置されています。
屋外コンセントから電源を取り、「ブーン」とうなっていると思います。
積雪の多い地域では、雪や氷から守るために、「ブロワボックス」という箱の中に設置されている場合もあります。
ブログ「浄化槽の構造と機能について」でもご説明しましたが、浄化槽は、生活排水を槽に溜め、それを、微生物(バクテリア)が分解して、浄化し、環境衛生上支障のないきれいな水にして放流しています。
その微生物には、嫌気性微生物(空気を嫌い、酸素の無い環境で活動する微生物)と好気性微生物(酸素を必要とする微生物)の2種類があり、好気性微生物が生きていくためには、空気が必要です。
また、浄化槽内に溜まった汚泥を移送したり、処理された水を消毒槽に送ったりするためにある、エアリフトポンプにも空気が必要です。
「ブロワ」は、その必要な空気を浄化槽に送り込んでいます。
ブロワとは
浄化槽の近く、建築物の壁際に、屋外コンセントを電源にした「ブロワ」が設置されています。
「ブロワ」は、好気性微生物が有機物を分解するためや槽内の汚泥移送や処理水を送り出すエアリフトポンプのために、空気を送っています。
一般的に使用されている「ブロワ」は、一口ですが、二口のものが使用されていた時期もありますので、交換時は確認が必要です。
浄化槽内には微生物が有機物を分解するため、ろ材(ろ過するための素材)や担体(微生物の住処となる部品)が充てんされています。
そのろ材や担体の間を汚水が通過する時、微生物の働きで有機物が分解されていきますが、分解がすすむにつれて、ろ材や担体に形成された生物膜(付着した微生物)が厚くなり、浄化能力が落ちていきます。
その生物膜を空気の力で剥ぎ取る作業を「逆洗」と言います。
ブロワで散気用空気配管のみのタイプが一口、散気用空気配管・逆洗用空気配管があるタイプが二口となっています。
逆洗用空気配管について
フジクリーンでは、CF型・CFⅡ型の時、ブロワに逆洗用空気配管がありました。
フジクリーンのCA型の「接触ろ床槽」にあたる部分が、フジクリーンのCF型・CFⅡ型の場合、「好気ろ床槽」と呼ばれ、「接触ばっ気部」と「生物ろ過部」に分かれていました。
CA型は「接触ろ床槽」の逆洗を維持管理業者さんに行ってもらうことで、散気用空気配管のみのブロワになり、逆洗回数や逆洗時間を設定するタイマーも必要なくなりました。
フジクリーンのCF型・CFⅡ型の「生物ろ過部」には、毎日定期的な逆洗が必要であったため、自動逆洗を行うため、ブロワに散気用空気配管と逆洗用空気配管があり、逆洗回数や逆洗時間の設定のためのタイマーが設置されていました。
フジクリーンCF型・CFⅡ型の自動逆洗
「構造図」
好気ろ床槽は、接触ばっ気部と生物ろ過部に分かれていて、通常稼動している散気用空気配管の空気は、接触ばっ気部のろ材に底部から空気を当てています(これを「ばっ気」と言います)。
接触ばっ気部では、好気性微生物(酸素を必要とする微生物)の働きにより、有機物の好気分解とアンモニア性窒素の硝化が行われます。
※「アンモニア態窒素の硝化」 硝化菌を使って、アンモニア態窒素を亜硝酸性窒素や硝酸性窒素に酸化します。
接触ばっ気部で処理された水が生物ろ過部に移動し、充てんされた担体(微生物の住処となる部品)により、SS(浮遊物質)の除去と接触ばっ気部から移流する酸素を含んだ処理水により、アンモニア性窒素の硝化が行われます。
また、接触ばっ気部と生物ろ過部は底でつながっており、生物ろ過部で処理された汚水の一部は接触ばっ気部へ移流されて、繰り返し処理されます。
好気ろ床槽で処理された汚水は、処理水槽に移流され、処理水の一部は、循環エアリフトポンプで沈殿分離部へ移送され、再度処理されます。
接触ばっ気部に形成された生物膜(付着した微生物)については、維持管理業者さんが保守点検時に、手動で逆洗を行ってくれますが、生物ろ過部の担体(微生物の住処となる部品)に付いたSS(浮遊物質)については、その処理能力を維持するために、SS(浮遊物質)を定期的に自動で逆洗し、剥離したSS(浮遊物質)を沈殿分離槽に移送することが必要でした。
生物ろ過部の自動逆洗は、標準で1日3回、5人槽と7人槽は1回10分間、10人槽は1回15分間、汚水の流入がない深夜(初期設定は逆洗開始時刻午前2時)に行われるよう設定されています。
散気用空気配管が遮断され、逆洗用空気配管に空気が供給されると、生物ろ過部の担体(微生物の住処となる部品)に底部から空気が当てられ、担体が流動することで、担体に付いたSS(浮遊物質)を剥離します。
逆洗用空気配管から、逆洗エアリフトポンプにも空気が供給され、剥離したSS(浮遊物質)を浄化槽に流入する汚水が最初に入る沈殿分離部に戻され、再処理されます。
また、逆洗時には、嫌気ろ床槽内の清掃孔内にある嫌気移送エアリフトポンプにも空気が供給され、嫌気ろ床槽内に堆積した汚泥は沈殿分離部に移送され、再処理されます。
タイマーで設定した逆洗時間が経過すると、自動で切り替え弁が作動して、通常運転に復帰します。
ブロワの交換について
ブロワの交換が必要な場合、吐出風量が同じであれば問題ないと思われますが、散気のみか逆洗があるのかはきちんと把握する必要があります。
逆洗用の空気配管がある場合、ブロワと浄化槽を接続している散気用空気配管と逆洗用空気配管を逆に接続すると、浄化槽が正常に作動しませんので、注意が必要です。
また、逆洗用の配管がある場合、浄化槽のメーカーさんで自動逆洗の逆洗回数、逆洗時間が異なりますので、設定の変更が必要です。
フジクリーンCF型・CFⅡ型に関しましては、フジクリーンさんが自社開発・製造した専用ブロワで設計・管理していますので、専用ブロワを使用してください。
浄化槽型式 | CF・CFⅡ-5型 | CF・CFⅡ-7型 | CF・CFⅡ-10型 |
ブロワ型式 | CFB70 UniMB80 | CFB100 UniMB100 | CFB140 |
ブロワの設置方法
ブロワは、浄化槽の水面より下に設置しないでください。
浄化槽の水面より下に設置すると、停電時等のブロワが停止せざるを得ない場合に、水が逆流し、漏電・感電の原因となります。
「ブロワの設置例」
ブロワの基礎は、建築物(家屋)の外壁から20cm以上(メーカーさんによっては30cm以上のところもあります)離し、建築物(家屋)基礎とつながらないようにしてください。
ブロワの設置にちょうど良い既設コンクリートがあったからといって、建築物(家屋)の基礎とつながったコンクリートにブロワを設置すると、ブロワの振動がコンクリートを介して建築物(家屋)の基礎に伝わり、床下の空間で反響して、夜寝ていると「ブーン」という音がどこからか聞こえるというようなことがおきます。
ブロワの脚部には防振ゴムが付いていますが、ブロワの基礎は建築物(家屋)の基礎とつなげないようにしてください。
また、ブロワの基礎は、地盤面(GL)より10cm以上高くし、ブロワの外寸より5cm程度大きくしてください。
ブロワは基礎の上に水平に設置してください。
ブロワと浄化槽をつなぐ空気配管の長さは、5m以内とし、曲がりは5か所以内としてください。
空気配管が所定の長さや曲がり数を超えると、ブロワの風量の損失がおきますので、空気配管の径(標準は13A)をワンランク大きくしてください。
そして、空気配管の上を車が通る場合には、厚み15cm以上の鉄筋コンクリートで保護してください。
積雪の多い地域では、「ブロワボックス」という箱をかぶせて、雪や氷からブロワを守ることもあります。
ブロワの電源となる屋外コンセントの設置は、電気工事士の資格を持つ専門業者に依頼してください。
電源の一次側には、漏電遮断器(ELB)を付けてください。
アースが必要なブロワにはアース(端子またはワニくちクリップ)が付いていますので、電気事業法による「電気設備に関する技術基準を定める省令」に基づくD種(第三種)接地工事を行ってください。
※「D種(第三種)接地工事」とは、「300V以下の低圧用機器に接地を施す工事」です。建物内で使用する機器の多くが100Vもしくは200Vですので、D種設置工事は頻繁に使われる工事です。
※「接地」とは、電気機器と大地を電気的に接続することで、電気機器を利用する人の安全性を確保するための作業です。
アースは、漏電等が発生した場合に電気を地面に逃す配線であり、感電を防ぎ、電化製品への悪影響を回避することができます。
適正な絶縁材の配置で二重絶縁構造に適合し、アースが不要なブロワもありますので、取扱説明書で確認してください。
※「二重絶縁」とは、電気機器を保護するための安全設計のひとつで、感電に対して基本的な保護を行う「基礎絶縁」に加えて、基礎絶縁が故障した場合の保護を行う「補助絶縁」を施すことで高い安全性を確保したものです。
ブロワ取り扱い上の注意点
浄化槽内の好気性微生物は、常にブロワからの空気が必要です。
また、汚泥の移送等に使われるエアリフトポンプにも空気の供給が必要です。
空気が供給されないと、浄化槽の処理が適正に行われなくなり、異臭が発生したり、住宅の排水が流れにくくなったりする場合があります。
旅行等の長期不在の場合でも、絶対にブロワの電源は切らないでください。
まとめ
浄化槽は、生活排水を槽に溜め、それを、微生物(バクテリア)が分解して、浄化し、環境衛生上支障のないきれいな水にして放流しています。
その微生物には、嫌気性微生物(空気を嫌い、酸素の無い環境で活動する微生物)と好気性微生物(酸素を必要とする微生物)の2種類があり、好気性微生物が生きていくためには、空気が必要です。
また、浄化槽内に溜まった汚泥を移送したり、処理された水を消毒槽に送ったりするためにある、エアリフトポンプにも空気が必要です。
「ブロワ」は、その必要な空気を浄化槽に送り込んでいます。
ブロワの機能及び種類について、設置方法について、取り扱い上の注意点について、ご説明してきました。
ブロワの設置に関しては、設置業者さんに依頼することになりますし、取り扱いに関しては、維持管理業者さんに依頼することになりますが、おおまかな内容を知っているだけでも安心できると思います。
しかし、ブロワの取り扱い上の注意点に関しては、浄化槽使用時の注意点と同じく、浄化槽管理者である使用者が気を配り、浄化槽の機能を妨げないようにすることで、浄化槽の機能を最大限使用することが大切だと思います。
浄化槽使用時の注意点につきましては、ブログ「浄化槽の構造と機能について」にて、ご説明しています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。