浄化槽の構造と機能について

浄化槽
博士
博士

単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への入れ替えが求められてきていますが、合併処理浄化槽がどのようにして汚水を浄化しているのかご説明しましょう。

助手
助手

浄化槽の汚水の処理方法を知ると、浄化槽の使用者としてどのようなことに気を付けていけば、浄化槽の能力を最大限使用することができるか知っていただけると思います。

はじめに

浄化槽は、微生物の働きにより、汚水を浄化し、放流しています。

トイレの汚水のみを処理する単独処理浄化槽は、平成13年施行の浄化槽法改正により、新設できなくなりました。

そして、トイレだけでなく、キッチンや洗濯機、洗面化粧台、浴室等の生活排水も処理する合併処理浄化槽の設置が義務づけられました。

現在、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への入れ替えもすすめられています。

では、合併処理浄化槽の構造と機能をみていきましょう。

浄化槽の構造と機能

フジクリーンCA型

浄化槽の構造はメーカーにより異なりますが、まず、フジクリーンのCA型を例にご説明します。

処理方式は、「接触ろ床方式」です。

処理性能は、「放流水のBOD=20mg/L以下、T-N=20mg/L以下、SS=15mg/L以下、COD=30mg/L以下(全て日間平均値)」になります。

=============

「BOD」 生物化学的酸素要求量
水中の有機物が微生物の働きで分解される時に消費される酸素の量
です。
有機物の汚れが大きければ、それだけ酸素の要求量が多くなるため、BODの値は大きくなります。
従って、BODが値が小さいことが要求されます。

「T-N」 全窒素
水中の窒素濃度
です。
有機物だけでなく、窒素の除去も必要とされています。

「SS」 浮遊物質・懸濁物質
水中の粒子状物質のうち、粒径(1μm~2mm)の含有量
です。
高いSS値は、水生生物の死滅や水中植物の生育に影響を及ぼす可能性があります。
従って、SS値が小さいことが要求されます。

「COD」 化学的酸素要求量
酸化剤により有機物が酸化される時に消費される酸化剤の量を酸素量に換算したしたもの
です。
水中の有機物の量を間接的に示すもので、COD値も小さいことが要求されます。

=============

「構造図」

沈殿分離槽

浄化槽に流入する生活排水は、まず、沈殿分離槽に入ります。

トイレからの汚物、キッチンからの油脂分・野菜くず、ビニール袋等の異物も入り込みます。

沈殿分離槽では、汚水中の固形物や油脂等を沈殿させることにより、分離します。

固形物は、汚泥として沈殿分離槽の底に溜まります。

また、沈殿分離槽の清掃孔と呼ばれる場所には、汚泥撹拌装置が設置されており、ブロワから送られた空気で底に溜まった汚泥を撹拌し、汚泥のスカム化を促進しています。

「スカム」 汚泥がガスを含んで軽くなり、浮上したものを「スカム」といいます。

沈殿分離槽の底に溜まった汚泥は、少しずつ増えていきます。

堆積汚泥が、80cm以上になることを目安に、清掃時期と判断され、管理業者さんが保守点検時に汚泥の汲み取りを行ってくれます。

管理業者さんとの契約によっては、汚泥の汲み取り量によって、別途請求される場合もありますので、キッチンで使用する油は紙等で拭き取りごみとして捨てる、野菜くずは三角コーナーできちんと受ける、ビニール袋等の異物は流さないという対応が必要です。

それが浄化槽の浄化能力を最大限使用することにつながります。

嫌気ろ床槽

嫌気ろ床槽には、ろ材(ろ過するための素材)が充てんされており、汚水がろ材を通過する際に、固形物の分離と有機物の嫌気分解・除去が行われるとともに、酸化態窒素脱窒を行います。

「嫌気分解」 嫌気性微生物空気を嫌い酸素の無い環境で活動する微生物が有機物を分解します。

「酸化態窒素」 亜硝酸性窒素・硝酸性窒素のことです。

「脱窒」 窒素ガスにして大気に放出します。脱窒菌が無酸素状態で、亜硝酸性窒素・硝酸性窒素の酸素を使用し、窒素ガスになります。

嫌気ろ床槽の底にも汚泥が溜まります。

嫌気ろ床槽の底に溜まった汚泥は、汚泥移送エアリフトポンプによって、沈殿分離槽へ常時移送され、沈殿分離槽で再度処理されます。

管理業者さんの保守点検時、嫌気ろ床槽の底に汚泥が30cm以上ある場合は、手動で汚泥の移送が行われます。

接触ろ床槽

接触ろ床槽には、ろ材(ろ過すための素材)が充てんされており、嫌気ろ床槽から移流した汚水は、ろ材に付着した好気性微生物(酸素を必要とする微生物)が、ブロワからの空気を受けて活動し、有機物の好気分解アンモニア態窒素の硝化が行われるとともに、浮遊物質(SS)の除去が行われます。

「好気分解」 好気性微生物(酸素を必要とする微生物)が有機物を分解します。

「アンモニア態窒素の硝化」 硝化菌を使って、アンモニア態窒素を亜硝酸性窒素や硝酸性窒素に酸化します。

好気分解がすすむと、接触ろ床槽のろ材に付着した生物膜が厚くなっていきます。

「生物膜」 ろ材に付着した微生物のことです。

生物膜が厚くなり過ぎると処理状態が悪化し、ろ材の閉塞がおこる可能性があります。

生物膜を剥離し、適正に維持するため、管理業者さんが、保守点検時に必ず逆洗作業を行ってくれます。

「逆洗作業」
ブロワから送られた空気は接触ろ床槽の上部で2系統に分かれ、底部からそれぞれ空気を送りこんでいます。
片側ずつバルブを全開にし、撹拌することで、ろ材に付着した生物膜を浮遊物質(SS)化していきます。
浮遊物質(SS)が処理水槽底部に溜まります。

処理水槽

接触ろ床槽で処理された水を一時的に貯留します。

処理水槽の底にも汚泥が溜まっていきます。

処理水槽の底に溜まった汚泥は、循環エアリフトポンプによって、沈殿分離槽へ常時移送され、沈殿分離槽で再度処理されます。

管理業者さんが、保守点検時、接触ろ床槽で逆洗作業を行った場合は、手動で循環バルブを操作し、処理水槽の底から、浮遊物質(SS)を逆洗水と一緒に沈殿分離槽に移送します。

消毒槽

処理水槽の水を放流エアリフトポンプを使用し、塩素剤で消毒します。

消毒槽から浄化槽の処理水が放流されますが、処理水は浄化され、環境衛生上支障のないきれいな水となっています。

クボタKZⅡ型

次に、クボタのKZⅡ型を例にご説明します。

処理方式は、「担体流動接触ろ床循環方式」です。

処理性能は、「放流水のBOD=20mg/L以下、T-N=20mg/L以下」となります。

=============

「BOD」 生物化学的酸素要求量
水中の有機物が微生物の働きで分解される時に消費される酸素の量
です。
有機物の汚れが大きければ、それだけ酸素の要求量が多くなるため、BODの値は大きくなります。
従って、BODが値が小さいことが要求されます。

「T-N」 全窒素
水中の窒素濃度です。

有機物だけでなく、窒素の除去も必要とされています。

=============

「構造図」

好気ろ床槽

浄化槽に流入する生活排水は、まず、好気ろ床槽に入ります。

好気ろ床槽には、ろ材(ろ過するための素材)が充てんされています。

ブロワから送られた空気が、好気ろ床槽の底から上がり、撹拌することで、汚水に含まれる大きな夾雑物(異物のこと)や固形物を破砕します。

更に、好気ろ床槽のろ材に付着した好気性微生物(酸素を必要とする微生物)が、ブロワからの空気を受けて活動し、有機物の好気分解を行います。

好気分解がすすむと、好気ろ床槽のろ材に付着した生物膜が厚くなっていきます。

「生物膜」 ろ材に付着した微生物のことです。

生物膜が厚くなり過ぎると処理状態が悪化し、ろ材の閉塞がおこる可能性があります。

生物膜を剥離し、適正に維持するため、管理業者さんが、保守点検時に必ず逆洗作業を行ってくれます。

「逆洗作業」
ブロワから送られた空気は好気ろ床槽だけでなく、同じく好気分解が行われる担体流動槽にも送られています。
好気ろ床槽に送られてくる空気のバルブを全開にし、担体流動槽へ送られる空気のバルブを全閉にすることで、好気ろ床槽への空気量を増やします。
ろ材底部から空気で撹拌し、ろ材から汚泥を剥離します。

沈殿分離槽

好気ろ床槽からの移流水に含まれる夾雑物(異物のこと)・固形物・汚泥を沈殿させることで分離し、貯留します。

沈殿分離槽の汚水は、水面下に設けられた移流口から次の移流先である嫌気ろ床槽へ流れていきます。

沈殿分離槽のスカムが、次の移流先である嫌気ろ床槽との間を仕切っている隔壁の上部を乗り越え、嫌気ろ床槽に達している場合、清掃時期と判断され、管理業者さんが保守点検時に汚泥の汲み取りを行ってくれます。

「スカム」 汚泥がガスを含んで軽くなり、浮上したものを「スカム」といいます。

嫌気ろ床槽

汚水が、槽内に充てんされたろ材(ろ過するための素材)で作られたろ槽を通過する際に、固形物や浮遊物質(SS)が分離されます。

また、嫌気性微生物(空気を嫌い、酸素の無い環境で活動する微生物)の働きにより、有機物の嫌気分解や亜硝酸性窒素・硝酸性窒素の脱窒を行います。

「脱窒」 窒素ガスにして大気に放出します。脱窒菌が無酸素状態で、亜硝酸性窒素・硝酸性窒素の酸素を使用し、窒素ガスになります。

嫌気分解がすすむと、嫌気ろ床槽の底に溜まった汚泥は、少しずつ増えていきます。

堆積汚泥が、45cmを超えている場合、清掃時期と判断され、管理業者さんが保守点検時に汚泥の汲み取りを行ってくれます。

また、沈殿分離槽からの移流管内の水位と嫌気ろ床槽内の水位を比較して、沈殿分離槽からの移流管内の水位が明らかに高い場合は、嫌気ろ床槽のろ材の閉塞が考えられます。

その場合、管理業者さんが保守点検時に、移流管部分に設けているメンテナンスバルブを開き、嫌気ろ床槽内の閉塞解除作業を行ってくれます。

メンテナンスバルブは、ろ床のガス抜きにも使用され、保守点検時に必ず数秒間開放しています。

担体流動槽

担体流動槽には、スポンジ状の担体が充てんされています。

槽の底に設けた散気管から吐出する空気により旋回流が形成され、担体が流動し、担体に付着した好気性微生物(酸素を必要とする微生物)の働きにより、有機物の好気分解やアンモニア態窒素の硝化を行います。

「担体」 微生物の住みかとなる役割を持つ部品です。直径1~2cmのプラスチック・スポンジ等で作られ、大きな比表面積がとれ、これに生物膜が形成されるため、担体を流動することにより、好気性微生物(酸素を必要とする微生物)が有機物や酸素等と接触し、効率的に処理を行えます。

「比表面積」 単位体積(容積)当たりの表面積のことで、浄化槽においては、接触材や担体等の汚水と生物膜の接触面積を算定する際に用いられます。

「生物膜」 ろ材に付着した微生物のことです。

「アンモニア態窒素の硝化」 硝化菌を使って、アンモニア態窒素を亜硝酸性窒素や硝酸性窒素に酸化します。

接触ろ床槽

接触ろ床槽には、網様の接触材を充てんしています。

槽の底に設けた散気管から空気を吐出し、接触材に付着した好気性微生物(酸素を必要とする微生物)の働きにより、有機物の好気分解やアンモニア態窒素の硝化、処理水中に含まれる浮遊物質(SS)の捕捉をします。

「接触材」 槽内に充てんし、生物膜を付着させるためのものです。礫(石)のことで、礫の間をゆっくりと汚濁水を流すことで、礫の表面に住む微生物が汚濁物質を吸着、分解し、浄化します。

生物膜が厚くなり過ぎると処理状態が悪化し、接触材の閉塞がおこる可能性があります。

接触材に付着した生物膜を剥離し、適正に維持するため、管理業者さんが、保守点検時に必ず逆洗作業を行ってくれます。

「逆洗作業」
隣り合った担体流動槽と接触ろ床槽に送られてくるブロワの空気の内、接触ろ床槽に送られてくる空気のバルブを全開にし、担体流動槽へ送られてくる空気のバルブを全閉にすることで、接触ろ床槽への空気量を増やします。
接触材底部から空気で撹拌し、接触材から汚泥を剥離します。

沈殿槽

処理水中の浮遊物質を沈殿分離し、きれいな上澄み水を作ります。

処理水は、放流エアリフトポンプで消毒槽に移送されます。

そして、沈殿槽内の汚泥は、槽内に設けた循環エアリフトポンプで、好気ろ床槽へ移送され、好気ろ床槽で再度処理されます。

その循環水量は、循環バルブを調整することで、管理業者さんが保守点検時に、行ってくれます。

また、沈殿槽の底に汚泥が蓄積すると、沈殿槽にスカムが浮上する原因になりますので、管理業者さんが保守点検時に、沈殿槽内の汚泥を好気ろ床槽へ移送する作業を行ってくれます。

沈殿槽の汚泥の移送作業は、接触ろ床槽の逆洗作業を行った後、実施されます。

汚泥移送作業は、循環バルブの開度を上げて、循環エアリフトポンプの吐出量を増やし、汚泥の吐出がなくなるまで行います。

消毒槽

処理水を消毒剤に接触させ、環境衛生上支障のないきれいな水として放流されます。

浄化槽使用時の注意点

浄化槽の構造と機能の説明をしてきましたが、それをふまえて、浄化槽の機能を妨げないようにすることで、浄化槽の機能を最大限使用することができます。

浄化槽への負担が減ることで、汚泥の汲み取り量が減り、維持管理における汚泥の汲み取り料金を減らすこともできるかと思われます。

水まわりごとの注意点をご説明します。

「洗濯機」
洗剤は適量使用し、漂白剤等を使用した後は、充分水を流してください。
浄化槽の微生物の負担が減ります。

「キッチン」
使用済みの油はシンクに流さず、紙等に吸わせてごみとして処理してください。
野菜くず等は三角コーナーに入れ、シンクの排水管に流れ込まないないようにしてください。
微生物の負担が減りますし、分解する負担が減れば、汚泥のたまりが遅くなります。

「トイレ」
紙おむつや生理用品等は流さないでください。
トイレットペーパーは適量使用してください。
水に溶けないティッシュペーパーは流さないでください。
水に溶けないものを流すと浄化槽の正常な機能を妨げます。
便器の洗浄には中性洗剤を適量使用し、強酸・強アルカリ・塩素等の薬品を使用しないでください。
微生物が死滅する場合があります。

「その他」
床用のワックスや機械油等を浄化槽に流し込まないでください。
微生物が死滅する場合があります。

「浄化槽まわり」

(ブロワ)
ブロワの電源は切らないでください。
浄化槽内の微生物には、ブロワから供給される空気が必要です。
空気がないと好気性の微生物は死滅してしまいます。
また、浄化槽内の水位を調整するエアリフトポンプにも空気の供給が必要です。
空気が供給されないと、浄化槽の処理が適正に行われなくなり、異臭が発生したり、水まわりの排水が流れにくくなる場合があります。
旅行等の長期不在の場合でも、絶対にブロワの電源は切らないでください。

(浄化槽上)
浄化槽の上に植木鉢や物干し台等を置かないでください。
保守点検や清掃が困難になります。

浄化槽の機能が充分に発揮されるよう、是非心掛けてください。

まとめ

家庭用小型浄化槽は、5人槽、7人槽、10人槽に分けられます。

住宅の延べ床面積が、130㎡までは5人槽、130㎡を超えた場合は7人槽、二世帯住宅の場合は10人槽となります。

単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への入れ替えが求められてきていますが、同じ人槽でも、トイレの汚水のみを処理する単独処理浄化槽と、トイレだけでなく、キッチンや洗濯機、洗面化粧台、浴室等の生活排水も処理する合併処理浄化槽だと、合併処理浄化槽の方が大きいため、今設置している単独処理浄化槽の場所に、新しく合併処理浄化槽を設置するのは困難でした。

そこで、浄化槽メーカーさんの努力により、合併処理浄化槽をコンパクト化し、また、流入管の深さと放流管の深さの差を少なくして、放流管の位置を浅くすることにより、浄化槽を深埋めしなくても、設置しやすい構造にしてくれました。

しかし、コンパクト化した分、構造が複雑になり、浄化槽の性能を維持するため、管理業者さんが行う保守点検の負担が増しているとも言えます。

浄化槽を使用している方は、浄化槽の性能が十分発揮できるよう、油分や野菜くず、ビニール袋を流さない等、自分のできることから始めてみてはいかがでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

スポンサーリンク

タイトルとURLをコピーしました