ディスポーザーは経済性が良く、環境への影響も少ないが、設置までのハードルは高い

生ゴミ処理機
博士
博士

キッチンをディスポーザー付のシンクに取り替えようと思ったんだけど、役所の許可が必要みたい。

助手
助手

ディスポーザーの種類にもよりますが、地域によって設置への考え方が異なるようですよ。

ディスポーザーは経済性が良く、環境への影響も少ないが、設置までのハードルは高い

ディスポーザーを使用すると、自治体の生ゴミ収集日まで保管することなく、生ゴミを処理できるので、悪臭や害虫の発生を防ぐことができます。
また、生ゴミを粉砕する分、収集日に出すゴミが減ります。

国土交通省が「直接投入型(単体)ディスポーザー」を各自治体(地方公共団体)が導入するか否か判断するために発表した「ディスポーザー導入時の影響判定の考え方」においても、経済性、環境面等の総合的な視点から影響評価を行った結果、行政コストも良く、環境負荷量も少なかったとあります。

しかし、「直接投入型(単体)ディスポーザー」の設置を認める自治体(地方公共団体)は少なく、ディスポーザー設置時は、役所への届出を必要とする自治体が多くあります。

住んでいる地域によってはディスポーザー設置までのハードルは高いと思われます。

ディスポーザーとは

キッチンにあるシンクの排水口の下部に取り付ける生ゴミ粉砕機です。

シンクの排水口から生ゴミを投入し、水道水を流しながら、生ゴミを粉砕し、排水管へと送り出します。

生ゴミを粉砕する構造は、いろいろありますが、「ハンマーミル」という構造が一般的です。
粉砕機の底にあるプレートが回転し、プレートに付いているハンマーが、投入された生ゴミを細かく砕き、遠心力で粉砕機の壁に押し付けてすり潰し、壁のすき間から水と一緒に排水します。

ディスポーザーの種類

日本では、1970年代にディスポーザーを製造するメーカーが現れました。
しかし、当時の下水道処理施設は、大都市の一部にしか無く、多くの下水道未整備地域からは、ディスポーザーは自粛の対象となっていました。

1990年代に専用の排水処理槽を組み合わせた「ディスポーザー排水処理システム」が登場し、多くの分譲マンションで採用されました。

処理槽付ディスポーザー(ディスポーザー排水処理システム)

ディスポーザーで粉砕した生ゴミを含む排水を、排水処理装置で処理し、下水道に流します。

排水処理装置の種類で、「生物処理タイプ」「機械処理タイプ」に分かれます。

生物処理タイプ

ディスポーザーで粉砕した生ゴミを含む排水を処理槽に溜め、微生物の働きにより、分解処理してから下水道に流します。

機械処理タイプ

ディスポーザーで粉砕した生ゴミを含む排水を処理機に送り、個体と液体に分離して、液体のみを下水道に流します。
個体は乾燥させて、通常ゴミとして処理します。

直接投入型(単体)ディスポーザー

ディスポーザーで粉砕した生ゴミを含む排水を、直接下水道に流します。

生ゴミを投入しながら破砕するのか、一括投入して蓋をしてから破砕するのかで、「連続投入式(外部スイッチ)」「パッチフィード式(一括投入式・蓋スイッチ)」に分かれます。

連続投入式(外部スイッチ)

ディスポーザーに水を溜めてからスイッチを入れ、水を流しながら生ゴミを投入して粉砕します。
粉砕が終了したら、10秒程水を流し続け、スイッチを切ります。

パッチフィード式(一括投入式・蓋スイッチ)

シンクの排水口に付いている蓋が、ディスポーザーのスイッチになっており、水を流しながら生ゴミを投入し、蓋を閉めるとディスポーザーが稼働します。
粉砕が終了したら、10秒程水を流し続け、蓋を開ければスイッチが切れます。

蓋を閉じた状態でディスポーザーを稼働しますので、小さなお子さんがいる家庭でも安心です。

メリット

・シンクの三角コーナーが不要になります。

・自治体の生ゴミ収集日まで保管することなく、その日に生ゴミを処理できるので、悪臭や害虫の発生を防げます。

・水を流しながら生ゴミを粉砕し、粉砕後も10秒程水を流し続けて、粉砕機内を洗浄しますので、こまめな掃除が不要です。

・粉砕して流す分だけ、収集日に出すゴミが減ります。

デメリット

・排水処理設備のメンテナンス等、維持管理費がかかります。

・ディスポーザーの稼働には電気料金、使用時には流す水の水道料金がかかります。

・粉砕時、作動音の大きいものがあります。

・大きい生ゴミはカットしなければなりませんし、生ゴミの量が多い場合は、小分けしなければなりません。

注意点

流してはいけないものがある

・とうもろこしの皮等のように繊維質が強いものは、機器に負担がかかります。

・大きな貝殻やカニの甲羅等硬いものは、機器を傷つけます。

・ドリップコーヒーのカス等粒子の細かいものは、機器を目詰まりさせやすくなります。

・通常の排水と同様、ディスポーザーが設置されていても、油を流してはいけません。

すべてのシンクに取り付け可能ではない

・マンション等では、排水は共同の配管であり、その処理能力によっては取り付け不可になることがあるため、マンションの管理組合や管理会社へ確認する必要があります。

粉砕した生ゴミを含む排水を直接下水道に流す「直接投入型(単体)ディスポーザー」の設置を認めない自治体があります。

ディスポーザーの設置に届出が必要な自治体があります。

直接投入型(単体)ディスポーザーへの各自治体(地方公共団体)の対応

国土交通省の対応

平成17年(2005年)7月27日、国土交通省より「ディスポーザー導入時の影響判定の考え方」最終取りまとめについて公表されました。
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国土交通省では、平成12年度(2000年度)から平成15年度(2003年度)までの4年間、下水道における「単体ディスポーザー」導入時の下水道施設への影響を評価する社会実験を北海道、歌登町と共同で行ってきました。
平成14年(2002年)5月に中間報告を行いましたが、今回、社会実験の最終成果と他都市における調査結果等を踏まえ、最終報告書として「ディスポーザー導入時の影響判定の考え方」を取りまとめたので公表します。
「影響判定の考え方」は、下水道管理者である地方自治体が、ディスポーザー導入を検討する上での技術的資料を提供することを目的として取りまとめたものです。
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要は、国では「ディスポーザー」を設置した場合の「行政コストの評価」や「環境負荷量の変化」等の資料を添え、考え方を提供しますから、各自治体でディスポーザーの導入を許可するか、しないか、それぞれの下水道事業、ゴミ処理事業及び地域の特性等を十分考えて判断してくださいとのことです。

「適用範囲」にはこうあります。
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本「考え方」が検討対象とするのは、ディスポーザー排水が直接公共下水道に排水される「直接投入型(単体)ディスポーザー」である。
処理槽付ディスポーザーは、「ディスポーザー排水処理システム」とも呼ばれ、直接投入型(単体)ディスポーザーに生物処理槽、または固液分離槽を付加したもので、ディスポーザー排水による下水道等への負荷を軽減し、ディスポーザーに対応していない我が国の下水道システムにおいても使用できるようにしたものである。
これについては、下水道へ流入する汚濁負荷が増大しないことを基本的な考え方としていることから、本「考え方」の適用範囲には含めないこととする。
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このことから、「処理槽付ディスポーザー(ディスポーザー排水処理システム)」に対しては認めており、「直接投入型(単体)ディスポーザー」に対して、「導入時の影響判定の考え方」を示すことになります。

影響判定の考え方 参考資料

国土交通省における「ディスポーザー導入時の影響判定の考え方」の「参考資料」は、以下の通りです。
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「参考資料1」下水道管理者のディスポーザーへの対応に関する調査について
「参考資料2」諸外国におけるディスポーザーの導入状況
「参考資料3」管渠内堆積物の掃流特性に関する模型実験
「参考資料4」合流式下水道越流水への影響予測計算例
「参考資料5」ディスポーザー利用者の利便性便益の調査事例
「参考資料6」LCA(ライフサイクルアセスメント)の手法を用いた影響評価事例
(モデル都市における検討事例)

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ライフサイクルアセスメント

「参考資料6」のおける「LCA(ライフサイクルアセスメント)については、以下のように書かれています。
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近年、地球環境保全が求められるようになり、環境負荷量を評価指標とする「ライフサイクルアセスメント」が多くの分野で用いられるようになった。
「ライフサイクルアセスメント」は製品の製造、使用、廃棄過程での環境負荷(温室効果ガス排気量やエネルギー消費量等)を評価する手法としても研究が進められてきている。
さらに、下水道とゴミ処理という別分野にまたがる問題について環境負荷の観点から統合的に評価する手法として有効である。
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下水処理事業でのデメリットだけでなく、ゴミ処理事業へのメリットも考えて、統合的に評価しましょうということです。

ディスポーザー導入時の影響判定の考え方

行政コスト評価

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・北海道歌登町を対象としてディスポーザーが100%普及した場合の行政コストを試算した結果、下水道への負荷増加に伴う下水道事業の費用増加が、可燃ごみ削減に伴う清掃事業の費用削減を下回った。
・したがって、町全体の行政コストはディスポーザー導入により減少するという結果になった。
・なお、本結果は試算例であり、対象地域、仮定条件により結果は異なると考えられる。
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ディスポーザーを導入したことにより、下水道処理施設への負荷はありますので、管きょ(公共下水道配管)や下水処理場のメンテナンスや維持管理等に多くの費用がかかりますが、ディスポーザーを使用することにより、ゴミ収集量から生ゴミ分が減少し、ゴミ収集にかかる費用や焼却施設、最終処分場(可燃ゴミを焼却処理した焼却灰及び不燃ゴミ等の埋立地)等にかかる費用が減少します。
国土交通省の実験では、ディスポーザーを導入したことによる、下水道負荷増加に伴う下水道事業の費用増加よりも、可燃ゴミ削減に伴う清掃事業の費用削減の方が大きかったということです。

環境負荷量の変化

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・北海道歌登町において、ディスポーザーが100%普及した場合の二酸化炭素、エネルギーベースのライフサイクル(建設、共用、廃棄段階)での環境負荷を推定した結果、二酸化炭素排出量、エネルギー投入量いずれも1%以下の増加率にとどまっており、ディスポーザーを導入してもほとんど変わらないという結果になった。
・なお、本結果は試算例であり、対象地域、仮定条件により結果は異なると考えられる。
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各家庭のディスポーザー使用時の電力、上水道使用等に伴う環境負荷の増加やゴミ収集車の走行距離の減少、最終処分場(可燃ゴミを焼却処理した焼却灰及び不燃ゴミ等の埋立地)の残余年数の変化に伴う環境負荷の変化を推定した結果、ディスポーザーを導入してもほとんど環境に変化はないということです。

各自治体(地方公共団体)の対応

国土交通省では、ディスポーザーの奨励も否定もしていません。
国土交通省の「導入時の影響判定の考え方」をもとに、各自治体(地方公共団体)が、ディスポーザー導入を検討します。

平成24年(2012年)1月、国土交通省が「ディスポーザー導入状況調査」を実施しました。

国土交通省の「導入時の影響判定の考え方」は、「直接投入型(単体)ディスポーザー」であり、「処理槽付ディスポーザー(ディスポーザー排水処理システム)」は含まれていませんでしたが、調査はそれぞれのディスポーザー設置を認めている団体数を調査しています。

ディスポーザー導入状況調査(国土交通省)

調査対象

下水道事業を実施している全ての市町村(都道府県は対象外)

調査方法

調査対象の地方公共団体にアンケートをメールで送付し、メールにより回収

質問回答の時点

令和2年(2020年)8月末時点での状況を記載

調査結果

処理槽付ディスポーザー設置を認めている地方公共団体  631団体

北海道: 39団体東 北: 50団体
関 東:188団体北 陸: 49団体
中 部: 83団体近 畿:107団体
中 国: 23団体四 国: 17団体
九 州: 66団体沖 縄: 9団体

直接投入型ディスポーザー設置を認めている地方公共団体  23団体

北海道: 15団体青森県: 1団体
群馬県: 1団体神奈川県:1団体
新潟県: 1団体富山県: 2団体
岐阜県: 1団体静岡県: 1団体

「影響評価の視点」から考えられること

国土交通省の「影響評価の視点」としては、
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ディスポーザー導入による下水道システム、ゴミ処理システム、市民生活への影響判定の結果を基に、経済性、環境面等の総合的な視点から影響評価を行う。
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とあります。

確かに、ディスポーザーを導入することにより、下水道処理施設への負荷がありますので、管きょ(公共下水道配管)や下水処理場のメンテナンスや維持管理等に多くの費用がかかりますが、ディスポーザーを使用することにより、ゴミ収集量から生ゴミ分が減少し、ゴミ収集にかかる費用や焼却施設、最終処分場(可燃ゴミを焼却処理した焼却灰及び不燃ゴミ等の埋立地)等にかかる費用が減少します。

しかし、それを運営しているのは各市町村の役所です。
下水道事業は「下水道課」(各役所で呼び方は変わります)が行っていますので、下水道処理施設に負荷がかかり、メンテナンスの負担が増え、費用がかかるようでは、ディスポーザーは許可しないでしょう。
可燃ゴミの減少に伴う経費削減があっても、ゴミ処理事業は「環境衛生課」(各役所で呼び方は変わります)の管轄でしょうから、環境衛生課の経費が削減されても、下水道課の費用負担とメンテナンスの手間は減らないということです。

それが、「処理槽付ディスポーザー設置を認めている団体」は多く、「直接投入型ディスポーザー設置を認めている団体」が少ない理由ではないかと思います。

まとめ

ディスポーザーについて、「種類」「メリット」「デメリット」「注意点」についてご説明いたしました。

ディスポーザーを使用すると、自治体の生ゴミ収集日まで保管することなく、生ゴミを処理できるので、悪臭や害虫の発生を防ぐことができます。
また、生ゴミを粉砕する分、収集日に出すゴミが減ります。

国土交通省の「ディスポーザー導入時の影響判定の考え方」においては、経済性、環境面等の総合的な視点から影響評価を行った結果、行政コストも良く、環境負荷量も少なかったとあります。

しかし、平成24年(2012年)に国土交通省が実施した「ディスポーザー導入状況調査」においては、「処理槽付ディスポーザー」の設置を認めている地方公共団体は631団体、「直接投入型ディスポーザー」の設置を認めている地方公共団体は23団体と、「直接投入型(単体)ディスポーザー」については、設置を認める市町村が少ないという結果になりました。

ディスポーザー設置には、役所への届出が必要な市町村が多く、住んでいる地域によってはディスポーザー設置までのハードルが高いと思われます。
設置を考える時は、まず、お住いの市町村の役所(下水道課だと思います)に確認することをおすすめします。

生ゴミ処理には、ディスポーザーだけでなく、設置に役所の許可が必要ない「生ゴミ処理機」もあります。
キッチンに設置して、生ゴミが出たタイミングで投入すれば、自動で処理してくれるものもあります。
その処理方法も、「バイオ式」「乾燥式」「ハイブリッド式」といろいろです。

生ゴミ処理機については、「生ゴミ処理機は使い方で選ぼう」で紹介しています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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