循環型社会形成推進交付金(浄化槽分)について説明します。
市町村が行う「浄化槽設置整備事業(個人設置型)」や「公共浄化槽等整備推進事業(市町村設置型)」に対する交付金の元になるものですね。
はじめに
循環型社会形成推進交付金(浄化槽分)は、国が、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換や公共浄化槽の整備促進・管理向上等を支援するものです。
循環型社会形成推進交付金(浄化槽分)は、環境省が浄化槽整備のため市町村に交付されます。
市町村は、環境省の作成したマニュアルに基づき、その市町村で行っている「浄化槽設置整備事業(個人設置型)」や「公共浄化槽等整備推進事業(市町村設置型)」において、交付金としてその地域の浄化槽整備に活用します。
環境省が交付する「循環型社会形成推進交付金(浄化槽分)」についてご説明します。
循環型社会形成推進交付金(浄化槽分)
令和4年12月23日付、環境省による「浄化槽整備推進関係 令和5年度当初予算案」概要資料を参照しています。
事業目的
・現在でも、全国で未だに約930万人が単独処理浄化槽やくみ取り槽を使用しており、生活排水が未処理となっている状況にあります。
政府目標である令和8年度の汚水処理施設整備の概成を目指し、改正浄化槽法(令和2年4月施行)に基づき、合併処理浄化槽の整備を加速化するとともに公共浄化槽制度を活用した管理向上のための支援を行います。
・また、合併処理浄化槽は、災害に強く、早期に復旧可能であり、防災・減災、国土強靭化の観点からも、老朽化した単独処理浄化槽やくみ取り槽の合併処理浄化槽への転換促進及び浄化槽の長寿命化を図るための支援を行います。
事業内容
市町村が行う浄化槽整備事業(浄化槽設置整備事業(個人設置型)、公共浄化槽等整備推進事業(市町村設置型))に対して交付金により支援します。
令和4年度補正・令和5年度予算では、赤の色付け部分の追加、見直しを行います。
◎環境配慮・防災まちづくり浄化槽整備推進事業(交付率1/2)
単独処理浄化槽やくみ取り槽から合併処理浄化槽(環境配慮型浄化槽に限る)に事業計画額の6割以上転換する事業です。
※環境配慮型浄化槽とは
消費電力基準及び環境性能を満たす浄化槽であり、「一般社団法人浄化槽システム協会」のホームページに適合機種の一覧表が掲載されています。
◎汚水処理施設概成に向けた浄化槽整備加速化事業(交付率1/2)<令和8年度までの時限措置>
汚水処理施設概成目標達成のために、従来の整備進捗率を上回って浄化槽整備を加速化する事業です。
※汚水処理施設概成目標とは
都道府県構想及び同構想を踏まえ市町村が策定するアクションプランに定める目標です。
◎単独処理浄化槽やくみ取り槽から合併処理浄化槽への転換
浄化槽設置・宅内配管工事、転換時の浄化槽撤去、単独処理浄化槽の雨水貯留槽等への再利用を行います。
※単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換については、ブログ「単独処理浄化槽はいつまで使えるのか?」でもご説明しています。
◎公共浄化槽による整備促進・管理向上に向けた事業
対象のPFI手法BTO方式の見直し(BOO方式、BOT方式の追加)、少人数高齢世帯の維持管理負担軽減を行います。
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ここで以下に、PFI手法の説明を差し込みます。
●PFI手法とは
自治体(市町村)が実施する「公共浄化槽等整備推進事業」において、民間事業者を活用する手法です。
・BTO方式
BTO方式とは、民間事業者が浄化槽を整備(Build)し、その後所有権を自治体に移転(Transfer)したあと、当該事業者(自治体)が維持管理(Operate)を行う方式です。
・BOO方式
BOO方式とは、民間事業者が浄化槽を整備(Build)・維持管理(Operate)し、事業終了後も所有(Own)し続ける方式です。
・BOT方式
BOT方式とは、民間事業者が浄化槽を整備(Build)・維持管理(Operate)し、事業終了後に所有権を自治体に移転(Transfer)する方式です。
令和4年度補正予算より、公共浄化槽事業をPFI方式にて実施する場合に、BOO(Build Operate and Own)方式、あるいは、BOT(Build Operate Transfer)方式の選択が可能になりました。
汚水処理事業をPFI手法で実施する場合、通常は民設公営に当たるBTO(Build Transfer and Operate)方式のみで、民設民営に当たるBOO(Build Operate and Own)方式やBOT(Build Operate Transfer)方式が採用されることは、ほとんどありませんでした。
しかし、浄化槽の分散処理という特徴から、BOO方式やBOT方式が有利となる場合も考えられ、選択可能になりました。
次に、「PFI手法導入によるメリット」「公共浄化槽事業におけるBOO・BOT方式導入の背景、理由」「BOO・BOT方式による官民のリスク分担」について、令和5年3月付、環境省による「公共浄化槽整備・運営マニュアル」を参照に説明を差し込みます。
●PFI手法導入によるメリット
・市町村のメリット
PFI手法を導入した場合、市町村で実施している作業の大部分を民間に委託することになるため、少ない職員数で事業を推進し、継続することが可能となります。
・民間事業者のメリット
浄化槽PFI事業では、民間企業が出資して設立した、特別目的会社(SPC)と市町村との間で事業契約を締結することになります。
浄化槽PFI事業の実施事例によると、市町村と特別目的会社(SPC)との契約期間は、10年から15年となっており、特別目的会社(SPC)とそのグループ企業にとっては、安定的に事業量を確保できることが期待されます。
そのため、浄化槽・資材、維持管理機材、薬品等の一括購入等によるコストの縮減も可能となります。
特に、施工方法や維持管理方法についても、市町村の発注仕様に基づいて実施するのではなく、法定事項以外は性能発注となるため、民間事業者の独自の手法・工夫によるコストの縮減が期待されます。
●公共浄化槽事業におけるBOO方式・BOT方式の導入の背景、理由
公共浄化槽事業では、個人が所有する住宅等に公共財産である公共浄化槽を設置し、市町村が所有することになります。
浄化槽PFI事業においても、従来のBTO方式では、民間事業者が浄化槽を設置した後、当該浄化槽の所有権を市町村に移転することとなります。
市町村において、個人住宅等に公共浄化槽を設置・所有する場合には、将来的に、当該個人住宅等が空き家となった場合における対応等の財産管理に係るコストの問題が生じ得ます。
令和2年4月施行の改正浄化槽法に基づく、公共浄化槽制度においては、市町村以外の者が所有する浄化槽を市町村に対して寄託等を行うことにより、浄化槽の所有を市町村に移転せずに、市町村が公共浄化槽として、浄化槽を管理することが可能とされたところです。
この公共浄化槽制度を適切に活用することにより、市町村における上記の問題への対応策として、市町村が浄化槽を所有する、従来のBTO方式に加え、民間事業者が浄化槽を所有しつつ、市町村との契約により、浄化槽の設置及び管理を行う事業方式(BOO方式、BOT方式)についても、公共浄化槽事業における新たな民間活用方式としてのニーズが出てきている状況となっています。
●BOO・BOT方式による官民のリスク分担
BTO方式の場合と異なり、BOO方式・BOT方式の場合、施設の所有に関するリスクは、所有者である民間事業者が事業期間中において責任を負うことが基本となるが、他事業の事例では、不可抗力(災害等)における施設の損害に対して、自治体が一部負担するとしていることもあるため、浄化槽PFI事業についても市町村が相応分を負担することも想定されています。
要するに
国としては公共浄化槽を民設公営から、リスクの少ない民設民営にしたいので、民間事業者は安定した事業を確保できますから、浄化槽の所有を市町村に移転せずに所有し続けてください。
所有している浄化槽が、災害等で損害を受けた場合は、相応分市町村が負担しないこともないですよ。
ということです。
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◎市町村が定める浄化槽長寿命化計画に基づく浄化槽の改築事業
※浄化槽長寿命化計画に基づく浄化槽の改築事業については、ブログ「令和4年度浄化槽長寿命化計画に基づく浄化槽の改築事業」でもご説明しています。
◎浄化槽整備効率化事業
浄化槽台帳、計画策定・調査(特定既存単独処理浄化槽の措置に係る調査等含む)、維持管理向上・費用削減に資する一括契約等に必要な情報収集・システム構築、講習会等を行います。
※特定既存単独処理浄化槽の措置については、ブログ「単独処理浄化槽はいつまで使えるのか?」でご説明しています。
補助対象、事業イメージ
◎事業スキーム
◎浄化槽設置整備事業(個人設置型)
◎公共浄化槽等整備推進事業(市町村設置型)
まとめ
環境省が浄化槽整備のため市町村に交付される、循環型社会形成推進交付金(浄化槽分)についてご説明しました。
循環型社会形成推進交付金(浄化槽分)は、国が、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換や公共浄化槽の整備促進・管理向上等を支援するものです。
循環型社会形成推進交付金(浄化槽分)は、環境省が浄化槽整備のため市町村に交付されます。
市町村は、環境省の作成したマニュアルに基づき、その市町村で行っている「浄化槽設置整備事業(個人設置型)」や「公共浄化槽等整備推進事業(市町村設置型)」において、交付金としてその地域の浄化槽整備に活用します。
皆さんが、単独処理浄化槽を合併処理浄化槽に転換する際の助成金の窓口は、あくまでも市町村です。
住んでいる地域によって行っている事業が異なる場合もありますので、お住いの地域の役所へご相談ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。