合併処理浄化槽設置時の放流水の処理について

浄化槽
博士
博士

合併処理浄化槽を設置しようと思うんだけど、排水は道路側溝につなげるのかしら?

助手
助手

宅地内に浸透させる方法もあるそうですよ。

合併処理浄化槽を設置する場合、排水の放流先は?

水路・側溝への接続

合併処理浄化槽を設置する場合、近くの水路か、道路側溝に接続し、放流していました。
しかし、許可を取るのが大変です。

河川に接続するなら「河川占用許可」、道路側溝に接続するなら「道路占用許可」が必要です。

道路側溝だから、市町村の建設課に許可を取れば良いのかと思われますが、これが農業用水路であれば、建設課だけでなく、農業者が都道府県知事の認可を受けて設立した、その地域の「土地改良区」という事務所で許可を取らなければなりません。

すると、「農業用水管理者」に「放流同意書」をもらわなければならないことを説明されます。

しかし、「土地改良区」を構成しているのは、農業従事者の方たちです。
大事な田畑に引く水に排水を混ぜたくはありません。
許可を取る方が、農業従事者である場合を除けば、許可を取ることはまず無理でしょう。

もちろん、合併処理浄化槽の浄化能力は高いですから、きちんと管理されていれば、用水が汚れることは無いのですが、自分たちの利益にならないのであれば、わざわざ許可して、もしもの心配をする必要はありませんよね。

では、農業用水路でなければ、すんなり許可が取れるのでしょうか。

もし、国道だったら、都府県ならば、「整備局河川国道事務所」、道ならば、「開発局開発建設部」の許可が必要です。

もし、都道府県道だったら、都道府県の「建設管理部」の許可が必要です。

もし、市町村だったら、市町村の役所の「建設課」の許可が必要です。

ただ、道路側溝は雨水を排出するために設置されたものであり、その地域の雨量を計算して設計されています。
不要な排水を接続したことにより、大雨が降った時、側溝があふれては困りますので、許可を出す側は、浄化槽の排水を接続しても、側溝があふれない根拠の提示を求めます。
その地域の雨量を計算して、側溝に浄化槽の排水を接続してもあふれないという「流量計算書」を作成しなければなりません。

これは、都道府県道の許可でも同じです。
市町村道であれば、まだ、その地域の役所で考え方が色々ですから、「流量計算書」が必要ではない地域もあるでしょうし、役所が「流量計算書」を作成してくれる地域もあると思います。
ただ、市町村は都道府県の指導を基に動きますので、都道府県と同様の書類を求めるところが多いと思います。

環境省からの通知

まだまだ、単独処理浄化槽の時代でしたが、環境省では、昭和63年10月27日交付で通知が出されています。

「浄化槽の設置等の届出を受理する際、浄化槽放流水の放流先の農業用水管理者、水利権者、地域住民等からの放流同意書が添付されている例が見られるが、放流同意書の添付を義務付けることが違法であることはいうまでもない。」

「放流同意書」を添付することが違法であれば、提出する必要はないのかと思えば、続きがありました。

「水路の管理者から水路の占用許可を得る必要がある場合、水路の管理者から法令に基づく協議が求められた場合等に法令上の手続きを行うよう指導することは、「放流同意」とは異なるものである。
法令上の手続きの例としては、土地改良法第56条(土地改良区の協議請求)、道路法第32条(道路の占用の許可)、河川法第26条(工作物の新築等の許可)等がある。
この場合においては、合併処理浄化槽の、生活排水対策としての重要性にかんがみ、水路の管理者等の理解を求め、水路の占用許可等が円滑に得られるように努められたい。
地域住民の慣習として「放流同意」が存在する場合には、浄化槽に対する正しい理解、知識の普及を図り、不合理な「放流同意」の解消に努められたい。」

要は、「土地改良法」「道路法」「河川法」にかかわる場合は協議が必要であり、水路の管理者の理解を求めてくださいとのことです。
「放流同意書」の慣習に関しては、浄化槽の正しい理解を求め、不合理な「放流同意」の解消に努めてくださいとのことです。

つまり、その地域に「放流同意書」の慣例が残っている場合は、「浄化槽の排水はきれいですから、同意書はいらないって言ってください」と理解を求めてくださいとのことです。
誰が理解してくれるのでしょうか。
現場への丸投げ感は否めないと思います。

さらに、環境省からは、平成9年4月11日交付の通知がありました。

「昭和63年10月27日の通知に基づき、浄化槽設置等の届出の際に放流同意書の添付を義務付けることのないよう徹底するとともに、管下保健所に対してもその旨周知徹底されたい。」

9年かけて、だめ押ししただけのような気がします。
浄化槽の設置届出には、「放流同意書」がいらないと言っても、地域の慣例が残っていたら、苦情は誰が対応してくれるのでしょう。
市町村の役所も「放流同意書」の添付を求めざるを得ない状況になると思います。

それから4年後、平成13年の浄化槽法改正により、浄化槽の新設は合併処理浄化槽のみとなりました。

宅地内浸透方式

占用許可の「放流同意書」の問題からなのかわかりませんが、合併処理浄化槽の放流水の処理を宅地内浸透方式でも良いとする地域が増えてきました。
自分の敷地の中で、放流水を浸透させるため、基準さえクリアできれば、浄化槽の設置許可のみで工事ができます。

ただ、都道府県で「浄化槽放流水の地下浸透に関する指導基準」は異なります。

まず、地下浸透を許可する条件として、「他に適当な浄化槽の放流先を確保することが困難な場合」という前置きが付くことが多く、その上で、

「地下水位が1.5m以上深い地域であること」
(これは地域によって2.0mのところもあります)
(1.5m掘る前に水が湧いてくるような土地には、浸透方式は使用できません)

「放流設備が井戸及びその他の水源から水平距離で30m以上離れていること」
(井戸に近い場所で排水を浸透させると、井戸水に影響を及ぼすかもしれないからです)

「散水管は隣地との境界線から5.0m以上離れていること」
(これは地域によって1.0m、1.5m、2.0m、3.0mのところもあります)
(浸透水の隣地への影響を考えています)

「散水管相互の間隔は2.0m以上離れていること」
(浸透に必要な面積は散水管の両端から1.0m隔てた線で囲まれた区域のため、散水管相互は2.0m以上離す必要があります)

「各散水管一系統の長さは20m以下とすること」
(それ以上長くしたら、効果的な浸透が望めないということだと思います)

等の多くのガイドラインが設けられています。

そして、現地の浸透試験を行います。

「土壌の浸透時間の測定方法」に基づき、浄化槽の放流水を処理するのに必要な散水管の長さを算出します。

1.0mも掘らないうちに、水が湧いてくるような土地には、浸透装置(トレンチ)は設置できません。

しかし、「放流同意書」が必要とされる地域では、農業用水路への排水は困難ですし、地域によって、流量計算書の必要性から、河川や道路側溝の占用許可を受けるのが難しい場合には、浸透装置(トレンチ)で許可がおりるのであれば、非常に有効な処置だと思います。

浸透装置(トレンチ)とは

トレンチは、均等に散水することができる構造とし、中心部に散水管を配し、幅を50cm以上70cm以下、深さを散水管の深さに15cm以上を加算したものとし、散水管の周囲は、目詰まりを防ぐため、多孔質の礫または砕石で埋設します。

泥、ごみ、雨水等の侵入を防ぐため、地表面を厚さおおむね15cmを突き固めた土で覆います。

散水管の一系統の最大長さは、20m以下とします。

散水管の浸透状況を確認するため、散水管末端部から地表に垂直に点検口(水位点検口)を設けます。

浸透面積は、放流水の地下浸透処理に直接必要となる面積であり、散水管及び散水管の両端から、1m隔てた線に囲まれた面積の合計とします。

「浸透試験」により、その土壌の浸透時間を測定し、必要な浸透面積を求めた上で、散水管の必要長さを決定します。

宅地内浸透方式につきましては、ブログ「浄化槽の地下浸透放流について」にて、ご説明しています。

まとめ

浄化槽設置に伴う放流水の放流先について話してきました。

水路や道路側溝への接続が難しければ、宅地内浸透方式が有効です。

ただ、宅地内浸透方式を取る場合でも、多くの基準をクリアしなければなりません。

トレンチの構造も、土壌の浸透時間試験方法も、地域によって微妙に異なります。
建設省(現国土交通省)の告示を受け、各都道府県、そして、浄化槽法に係る事務権限を都道府県から移譲された各市町村が決めているわけですから、地域で微妙に異なってしまいます。

浄化槽設置整備事業で合併処理浄化槽を設置した時、当初はベースコンクリートの下に捨てコンが必要となっていましたが、次の年は不必要となり、その次の年は再度必要と指導されました。
都道府県及び市町村の取り決めが、その頃は、まだ流動的な部分が多く、対応が迷走していたものと思われます。

事前協議の時点と実際の工事の時点で、あまりにも異なったことを言われると、困惑してしまいますが、だからこそ、浄化槽設置をお考えの時は、事前にまず地元の役所に相談に行くことをおすすめします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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