合併処理浄化槽のカタログを見ると、高度処理型と書いてあるものが増えましたね。
高度処理型の合併処理浄化槽には、「窒素除去タイプ」と「窒素・リン除去タイプ」があるようですよ。
合併処理浄化槽の種類
合併処理浄化槽を設置する時、業者さんの見積りに記載されている浄化槽がどういうものか調べてみたことはありませんか?
記載の仕方は、メーカーによっていろいろですが、合併処理浄化槽のカタログを見ると、「接触ろ床方式 高度処理型(N除去型)」とか「接触ろ床方式にリン除去装置を加えた方式 高度処理型(N・P除去型)」とか「コンパクト高度処理型(窒素除去タイプ)」とか書いてあります。
なかには、「コンパクト高度処理型」しか書いていないものもあります。
合併処理浄化槽の高度処理
浄化槽処理能力を示す指標
浄化槽の処理性能を示す指標として「BOD」「T-N」「T-P」「SS」「COD」があります。
「BOD」 生物化学的酸素要求量
水中の有機物が微生物の働きで分解される時に消費される酸素の量
「T-N」 全窒素
水中の窒素濃度
「T-P」 全リン
水中のリン濃度
「SS」 浮遊物質・懸濁物質
水中の粒子状物質のうち、粒径(1μm~2mm)の含有量
「COD」 化学的酸素要求量
酸化剤により有機物が酸化される時に消費される酸化剤の量を酸素量に換算したしたもの
高度処理型とは
高度処理型とは、窒素(T-N)、リン(T-P)を除去するものです。
窒素は、微生物の働きを利用した硝化液循環方式で除去します。
リンは、鉄電極で除去します。
「接触ろ床方式 高度処理型(N除去型)」
窒素を除去する機能を持った高度処理型の合併処理浄化槽
「接触ろ床方式にリン除去装置を加えた方式 高度処理型(N・P除去型)」
窒素とリンを除去する機能を持った高度処理型の合併処理浄化槽
「コンパクト高度処理型(窒素除去タイプ)」
窒素を除去する機能を持った高度処理型の合併処理浄化槽
「コンパクト高度処理型」のみの記載
処理能力と構造から、窒素を除去する機能を持った高度処理型の合併処理浄化槽
処理能力の数値
・窒素を除去する機能を持った高度処理型の合併処理浄化槽の処理能力の数値は
「BOD」(生物化学的酸素要求量) 20mg/L以下
「T-N」(全窒素) 20mg/L以下
「SS」(浮遊物質・懸濁物質) 15mg/L以下
「COD」(化学的酸素要求量) 30mg/L以下
であることが多いです。
これが、一般的な数値かと思われます。
・窒素とリンを除去する機能を持った高度処理型の合併処理浄化槽の処理能力の数値は
「BOD」(生物化学的酸素要求量) 10mg/L以下
「T-N」(全窒素) 10mg/L以下
「T-P」(全リン) 1mg/以下
「SS」(浮遊物質・懸濁物質) 10mg/L以下
「COD」(化学的酸素要求量) 15mg/L以下
窒素のみ除去する機能を持った高度処理型合併処理浄化槽と比べると数値が全体に低く、「T-P」(全リン)の除去機能も備えており、高度処理能力の高さがわかります。
下水道処理施設の高度処理
「高度処理」については、下水道処理施設の話の中に出てきます。
水洗化された住宅から排出された下水は、下水道管を通り、下水道処理施設に集められます。
下水道処理施設に集められた下水は、処理施設で浄化され、海に放流されます。
しかし、放流先が閉鎖性水域の場合はどうでしょう?
閉鎖性水域とは、三大湾や湖沼等、河川や海域に比べて、汚れが滞留しやすく、水質改善が進みにくい場所をいいます。
開放的な海域に放流される場合より、湾や湖、沼に放流される場合の方が、汚れが滞留しやすいため、より高度な処理能力が求められます。
閉鎖性水域では、下水道処理施設で浄化された水が放流されただけでも、処理水に含まれる窒素、リンのため、水が栄養に富み、赤潮・青潮、アオコ等の発生を促し、水産業、生態系、景観等への深刻な影響を生じることになります。
国土交通省「高度処理ナレッジ創造戦略会議」
国土交通省では、閉鎖性水域における早期水質改善のための高度処理化を一層推進するため、平成26年1月に「高度処理ナレッジ創造戦略会議」を設置しました。
各地域で実施されている既存施設を活用した高度処理の事例、運転管理ナレッジを「高度処理ナレッジ集」として取りまとめ、平成26年3月に公表しました。
「ナレッジ」とは、知識、情報を意味します。
既存施設を活用した段階的高度処理推進のすすめ
既存施設が稼働している場合には、老朽化した場合でも、長く稼働を止めるわけにはいかないので、改築更新時期や費用等の問題で、なかなか高度処理は進みません。
そこで、「段階的高度処理」として、水域の早期水質改善に向けて、既存施設の一部改造や運転管理の工夫により、段階的に高度処理化を図る手法が示されました。
つまり、今までは、改築更新時期に全面的に改築することで、高度処理化を図っていましたが、これからは、改築更新時期を待たずに、既存の施設を最大限活用して、部分的な施設・設備の改造や運転管理の工夫により、目標水質の確保に向けて、段階的に水質の向上を図っていこうというものです。
まとめ
閉鎖性水域における下水道処理施設の高度処理化に伴い、合併処理浄化槽にも高度処理化が求められます。
各浄化槽メーカーさんが、高度処理化を目指し、「窒素除去タイプの高度処理型合併処理浄化槽」や「窒素・リン除去タイプの高度処理型合併処理浄化槽」を開発しています。
閉鎖性水域に下水道処理水を放流している地域では、その市町村で下水道処理施設の処理能力の規定を設けています。
合併処理浄化槽を設置する場合でも、下水道処理施設に準ずる処理能力が求められています。
実際、霞ヶ浦流域の県では、窒素・リンを除去できる高度処理型合併処理浄化槽の設置が義務づけられています。
これからは、「窒素除去タイプの高度処理型合併処理浄化槽」だけでなく、リン除去の性能が求められていくかと思われます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。