単独処理浄化槽はいつまで使えるのか?

浄化槽
博士
博士

単独処理浄化槽ってまだ使い続けられるの?

助手
助手

浄化槽法も何度か改正されて、合併処理浄化槽に入れ替えをすすめているようですよ。

単独処理浄化槽と合併処理浄化槽

浄化槽には、単独処理浄化槽と合併処理浄化槽があります。

微生物の働きを利用して汚水を処理するのは変わりませんが、トイレの排水のみを受けて処理するのが「単独処理浄化槽」、トイレだけでなく、キッチン・洗濯機・洗面化粧台・浴室等の排水も受けて処理するのが「合併処理浄化槽」です。

平成13年施行の浄化槽法改正により、浄化槽を設置する場合には、原則として合併処理浄化槽の設置が義務づけられました。
これにより、単独処理浄化槽は新設することができなくなりました。

浄化槽法の改正(平成18年施行)

浄化槽の法定検査に関する指導強化

平成13年4月1日施行の改正浄化槽法では、「既存の単独処理浄化槽については、下水道の予定処理区域にあるものは、下水道につなげる工事をするまで、そのまま使ってもいいですが、下水道の予定処理区域ではない時は、合併処理浄化槽への設置替えに努めてください」という話でした。

しかし、工事には費用がかかりますから、誰も無理してまで工事はしません。

また、適正な維持管理がなされているかを確認する定期検査の実施率が低かったため、平成18年2月1日施行の改正浄化槽法において、浄化槽の法定検査に関する指導監督が強化されました。

「都道府県知事は、浄化槽管理者が当該検査を受けていないと認める場合においては、生活環境の保全及び公衆衛生上必要があると認める時は、当該浄化槽管理者に対し、当該検査を受けるべき旨の勧告をすることができる」ことになりました。

ここて言う「浄化槽管理者」は、浄化槽を設置して、使用している「あなた」のことです。

また、浄化槽管理者が正当な理由なしに措置をとらない時は、勧告に係る措置をとるよう命ずることができ、さらに、命令に違反した者は、30万円以下の過料に処することになりました。

浄化槽使用の廃止の届出

浄化槽設置状況の把握を図るため、浄化槽管理者は、浄化槽の使用を廃止した時は、浄化槽の廃止届を都道府県知事に届けなければならないことになりました。

そして、廃止の届出をしない、または、虚偽の届出をした者は、5万円以下の過料に処することになりました。

ただ、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への入れ替えを推進するため、単独処理浄化槽の撤去費が助成対象となりました。

浄化槽法の改正(令和2年施行)

特定単独処理浄化槽に対する措置

平成30年度末において、設置されている全浄化槽の半分がまだ単独処理浄化槽であり、単独処理浄化槽の法定検査の受検率が25.6%と低い水準にあったため、環境負荷の低い合併浄化槽への入れ替えを促したい国は、再度、浄化槽法の改正を行いました。

令和2年4月1日に施行された改正浄化槽法により、「そのまま放置すれば生活環境の保全及び公衆衛生上重大な支障が生ずるおそれのある状態にあると認められる単独処理浄化槽(特定既存単独処理浄化槽)の浄化槽管理者に対し、都道府県知事は、除却その他生活環境の保全及び公衆衛生上必要な措置をとるよう指導及び助言をすることができる」ことになりました。

要は、「設置後40年以上経過した単独処理浄化槽がいっぱいあるので、老朽化した単独処理浄化槽が破損や漏水等により公衆衛生上迷惑をかけるかもしれないので、合併処理浄化槽に入れ替えてもらいますよ」ということです。

また、都道府県知事は、特定既存単独処理浄化槽の状態が改善されない場合は、除却その他必要な措置をとることを勧告することができ、正当な理由がなく措置をとらなかった時は、措置を命ずることができます。
さらに、命令に違反した者は、30万円以下の過料に処することになりました。

ただ、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽へ入れ替えを行う場合に、単独処理浄化槽の撤去や宅内配管工事が必要となる場合おいては、助成基準額の特例が適用されることになりました。

合併処理浄化槽の工事費用と単独処理浄化槽の撤去費用が現行の助成基準額を超える場合は、現行の基準額に最大9万円を加えた額が基準額となります。

また、宅内配管工事については、流入管(トイレ・キッチン・洗濯機・洗面化粧台・浴室等からの排水)、桝の設置及び住居の敷地に隣接する側溝までの放流管を対象として、上限額30万円にて補助対象となりました。

浄化槽処理促進区域と公共浄化槽

自然的経済的社会的諸条件からみて、浄化槽による汚水の適正な処理を特に推進する必要があると認められる区域を「浄化槽処理推進区域」として市町村が指定することができるようになりました。

また、浄化槽処理促進区域内に存する浄化槽のうち「設置計画に基づき設置された浄化槽であって市町村が管理する浄化槽」及び「地方公共団体以外の者が所有するものについて市町村が管理する浄化槽」を「公共浄化槽」とすると定義しました。

市町村が実施する浄化槽の整備に関する事業には、「浄化槽設置整備事業」(個人の浄化槽の設置に対して補助する事業)と「公共浄化槽等整備推進事業」(市町村が公共事業として浄化槽を整備する事業)(浄化槽法改正において、「浄化槽市町村整備推進事業」より名称変更)があります。

この市町村設置型の「公共浄化槽等整備推進事業」を実施する場合、これらの浄化槽を設置する区域が浄化槽処理促進区域に含まれる時は、法定の手続きに則り、公共浄化槽として設置することになります。

要は、市町村が設置主体となることで、維持管理が徹底され、設置に関する住民の負担を軽減し、市町村が整備を進めることで、単独処理浄化槽や汲み取り便槽から合併処理浄化槽への入れ替えを促進させようとするものであり、公共浄化槽を設置することに事前に同意した者への公共浄化槽の使用、接続の義務を定めたものです。

浄化槽使用の休止及び再開の届出

これまでは、一時的に空き家になっても、浄化槽の保守点検や定期検査は義務づけられていましたが、清掃を要件として、浄化槽管理者が使用の休止を都道府県知事に届け出た浄化槽について、保守点検、清掃及び定期検査の義務を免除する規定ができました。

ただ、休止に係る清掃は、通常の清掃とは異なり、汚泥の引き出しは全量、洗浄に使用した水の再利用の禁止、水道水等を使用して張り水を行う等の施行規則に定められた基準に則る必要があります。

また、虚偽の休止の届出をした者は、5万円以下の過料に処されます。

そして、浄化槽の使用を再開した時は、30日以内に都道府県知事に届け出なければなりません。
使用の再開の届出をせず、または虚偽の届出をした者は、5万円以下の過料に処されます。

まとめ

平成13年施行の改正浄化槽法により、単独処理浄化槽の新設が禁止されました。

既存の単独処理浄化槽はそのまま使用可能でした。

下水道の予定処理区域であれば、公共下水道が引かれた時は、単独処理浄化槽から下水道に転換することになりますが、予定処理区域でなければ、そのまま単独処理浄化槽を使い続ける方が多かったと思います。

国は、環境への負荷を理由に単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への入れ替えを促進しましたが、費用がかかりますので、入れ替えは進みませんでした。

国庫補助事業は、昭和62年から実施されており、今日、浄化槽の設置主体よって、「個人設置型」「市町村設置型」の国庫補助事業があります。

「個人設置型」の「合併浄化槽設置補助事業」は、平成15年度「浄化槽設置整備事業」と変更され、平成10年には、合併処理浄化槽の設置費用の約4割を補助対象の基準とすることになりました。

一方、「市町村設置型」は、平成6年度「特定地域生活排水処理事業」として創設し、平成15年度に「浄化槽市町村整備事業」と変更、令和3年度に「公共浄化槽等整備推進事業」と変更され、下水道の公共事業と同様な財政措置を行っています。

しかし、助成事業が多くの市町村で取り上げられ、多くの人が申請し始めたのは、平成13年施行の合併処理浄化槽設置の義務づけからだと思います。

合併処理浄化槽を新設する方は、助成金を使用して工事しますが、下水道予定処理区域外で既存の単独処理浄化槽を使用している方は、合併処理浄化槽に入れ替えするとなると、宅内配管工事や浄化槽の接続配管工事に費用がかかります。

国は、まず平成18年施行の改正浄化槽法で、法定検査の引き締めと浄化槽の廃止届の義務づけを行いました。

しかし、思うように法定検査の受検率は上がらず、単独処理浄化槽は減りません。

それで、令和2年施行の改正浄化槽法では、単独処理浄化槽の古いものは合併処理浄化槽に入れ替えてもらいますと決めました。

ただ、単独処理浄化槽の撤去費用と宅内配管工事費用を新たに助成してくれることになりました。

また、市町村が設置主体となる公共浄化槽の設置をすすめ、使用、接続を義務づけることで、単独浄化槽から合併浄化槽への入れ替えを促進しようとしています。

維持管理においても、浄化槽の休止届を出すことで、保守点検と定期検査が免除される規定ができました。

依然として、連合会、協会、協議会等、これほどの団体が必要なのかと思う面もありますが、以前と比べると浄化槽の助成事業は進んできていると思います。

いずれ強制的に合併処理浄化槽へ入れ替えを迫られるのであれば、単独処理浄化槽を使用している方は、今のうちに一度、お住いの役所に相談されてはいかがでしょうか。

最後までよんでいただき、ありがとうございました。

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