「浄化槽長寿命化計画」って知ってる?
浄化槽をメンテナンスし、長く使い続けることで、入れ替え費用を抑えるよう、地域の地町村が策定して進める事業よ。
地域によっては、「浄化槽の改築事業」として、浄化槽の機器交換や補修に助成があるようですよ。
はじめに
環境省は、令和4年4月「浄化槽長寿命化計画策定ガイドライン第2版」をとりまとめました。
「浄化槽長寿命化計画」とは、地域の市町村が、浄化槽の改築(浄化槽の機器交換・補修)に係る情報を整理し、費用の見積を行い、方針を決めて進めていくものであり、その策定した長寿命化計画において、浄化槽の設置、使用、更新(入れ替え)等に伴うライフサイクルコスト分析がなされ、浄化槽を入れ替えるより、改築(機器交換・補修)をした方が良いと判断されたものに対し、国が決めた基準額により市町村に助成を行うというものです。
市町村に対し、その手引きとして作成されたのが「浄化槽長寿命化計画策定ガイドライン第2版」です。
公共浄化槽を対象とした場合と、個人設置型浄化槽を対象とした場合の「浄化槽長寿命化計画」の構成について説明しています。
国の浄化槽整備事業には、「公共浄化槽等整備推進事業」と「浄化槽設置整備事業(個人設置型)」があり、市町村によっては、どちらかの事業に力をいれている場合があるからです。
「浄化槽長寿命化計画策定ガイドライン第2版」と「浄化槽長寿命化計画に基づく浄化槽の改築工事」についてご紹介します。
浄化槽長寿命化計画策定ガイドライン第2版
環境省により、公共浄化槽の長寿命化を対象として、令和3年4月に公表された「浄化槽長寿命化計画策定ガイドライン」に、個人が設置、管理する浄化槽(個人設置型浄化槽)の長寿命化に係る内容を追加したものであり、市町村が、公共浄化槽及び個人設置型浄化槽の長寿命化に向け、取り組みを進めるための「浄化槽長寿命化計画」を策定する際の手引きとして活用されることを目的に取りまとめられました。
浄化槽長寿命化対策の必要性
ガイドラインには、こう記載されています。
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浄化槽システムは、我が国が持続可能な汚水処理システムの構築を目指す中で、都市郊外や地方部において、効率的・経済的な汚水処理サービスの提供を担うシステムです。
「環境省」は、廃棄物処理施設整備計画(平成30年6月閣議決定)において、各種施策より浄化槽整備区域において、浄化槽の整備を推進し、適切な汚水処理サービスを提供することとしています。
「財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会(平成30年10月17日)」は、社会資本整備の課題として、長寿命化による維持コストの最小化、ストック効果の最大化を掲げています。
地域における汚水処理インフラを担う浄化槽システムにおいても、同様に長寿命化による維持コストの最小化、既存ストックの最大化に向けた対策が求められています。
浄化槽システムは、現状の維持管理や機器交換・補修の実施状況であっても、その健全度は経年劣化しているものと評価され、破損や漏水の発生による感染症の拡大といった生活環境リスクが懸念されるところです。
浄化槽システムの処理能力を維持しつつ健全度を長期間保持するためには、浄化槽台帳に基づく設置年数の記録、保守点検や清掃・法定検査等の従来維持管理手法の中での劣化予兆の早期発見、適切な機器交換・補修の実施といった予防保全に着目した長寿命化対策が必要とされています。
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長寿命化対策として、計画的・予防保全的な機器交換や補修を行った場合の浄化槽の設置・使用・更新(浄化槽の入れ替え)に係るライフサイクルコスト(LCC)の縮減効果を試算します。
長寿命化対策により、機器交換費や補修費は増加しますが、長寿命化によって年当たりの更新費用(浄化槽を入れ替える費用)が削減されることにより、ライフサイクルコストが低減されます。
傾斜地や狭小地といった更新事業の費用が多くかかる土地の場合、長寿命化対策を行うか、行わないかで更新費用の差分が大きくなるため、ライフサイクルコストの縮減効果は大きくなります。
浄化槽整備事業に対する補助と浄化槽長寿命化計画の位置づけ
ガイドラインには、こう記載されています。
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国は、浄化槽整備事業として、浄化槽設置整備事業(個人設置型)や公共浄化槽等整備推進事業といった計画的な浄化槽の整備を行うのに必要な費用を助成する事業を行っています。
また、浄化槽の長寿命化を推進する観点から、公共浄化槽(従来の市町村設置型浄化槽を含む)及び法定協議会等の関与により、管理の適正化・効率化が図られる個人設置型浄化槽を対象として、長寿命化計画に基づき改築を行う事業に対して、その機器交換・補修に係る費用について助成を行っています。
浄化槽長寿命化計画は、長寿命化対策を円滑に実行するために、自治体(原則としてはその地域の市町村等)が、浄化槽の改築に係る情報の整理、費用の見積、実施方針等について記載したものと位置づけます。
従って、長寿命化計画は、個別の浄化槽の実態を反映することに重きを置くものではなく、自治体等の区域のうち自然的経済的社会的諸条件からみて、浄化槽によるし尿及び雑排水の適正な処理を特に促進する必要があると認められる区域にある浄化槽全体の長寿命化を図ることを目的にしたものです。
また、長寿命化対策は、予防保全の考え方を主とするものであるが、故障・トラブル等の突発的な事象に対する事後対処についても包含するものです。
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浄化槽長寿命化計画に基づく浄化槽の改築事業
市町村が定める「浄化槽長寿命化計画」に基づき、公共浄化槽(従来の市町村設置型浄化槽を含む)や浄化槽台帳システム等にきちんと登録し、浄化槽法第11条に基づく法定検査をきちんと受けている浄化槽に対してのみ、個人設置型浄化槽も、市町村が認め、更新よりも改築が良いと判断され、共用開始から7年以上経過している浄化槽の改築(浄化槽の機器交換・補修)に限り、助成金が支払われます。
「浄化槽長寿命化計画に基づく浄化槽の改築事業」については、環境省による、令和4年度全国浄化槽行政担当者会議(第2回)説明資料である「浄化槽整備関係の交付金・補助金の積極的な活用について」に記載されています。
市町村が定める浄化槽長寿命化計画に基づく浄化槽の改築事業
市町村が定める浄化槽長寿命化計画に基づく浄化槽の改築(下記①、②を満たすもの)に要する費用に対し、下記の表に定める基準額により助成を行います。
①市町村が定める浄化槽長寿命化計画において、ライフサイクルコスト分析がなされ、浄化槽の更新に比して、当該改築事業によることが優位と判断されるものであること。
②供用開始から7年以上が経過している浄化槽の改築であること。
[浄化槽設置整備事業]
項目 | 基準額(×基数) |
ブロワの交換 | 21千円 |
水中ポンプの交換 | 54千円 |
マンホールの交換(樹脂製) | 14千円 |
マンホールの交換(鉄製) | 60千円 |
躯体・仕切版の補修 | 61千円 |
担体(ろ材又は接触材の受け・ 押さえ含む)の補充補修 | 34千円 |
[公共浄化槽等整備推進事業]
項目 | 基準額(×基数) |
ブロワの交換 | 52千円 |
水中ポンプの交換 | 135千円 |
マンホールの交換(樹脂製) | 35千円 |
マンホールの交換(鉄製) | 150千円 |
躯体・仕切版の補修 | 153千円 |
担体(ろ材又は接触材の受け・ 押さえ含む)の補充補修 | 84千円 |
浄化槽改築事業の要件
令和2年4月施行の改正浄化槽法により、各都道府県等に浄化槽台帳の整備が義務づけられました。
浄化槽台帳の整備や電子化・システム化を推進することにより、浄化槽の設置、保守点検、清掃、法定検査の受検状況等の情報を一元的に管理し、当該情報に基づき、単独処理浄化槽の合併処理浄化槽への転換の一層の促進、法定検査未受検者への効率的な受検指導、保守点検や清掃等の状況の把握を通じた維持管理の向上を目的としています。
そして、要件として次が記載されています。
・改築事業の対象となる浄化槽について、市町村や法定協議会等の適切な関与により、この浄化槽台帳システム等の整備を通じた設置、維持管理情報の把握及び当該情報に基づく指導監督等を通じた、適正かつ効率的な管理が図られるものであることが必要です。
・改築工事の対象となる浄化槽において、浄化槽法に定める維持管理が適正に行われていることを、同法第11条検査に基づく法定検査の結果等により確認していることが必要です。
浄化槽改築事業のねらい・効果
1.公共インフラである浄化槽の強靭化対策・適正なストックマネジメントによるトータルコスト低減
浄化槽は汚水処理のための公共インフラであるため、市町村や法定協議会等の公共が適切に関与し、浄化槽台帳システム等による設置・維持管理情報の登録や当該情報に基づく指導監督等を通じて、浄化槽の改築・修繕等を適時適切に行い、老朽化した浄化槽に対する強靭化対策及び適切なストックマネジメントによるトータルコスト低減を推進します。
2.浄化槽の維持管理面の負担軽減・単独転換の促進
浄化槽の経年使用に伴って、一定年数毎に必要となるブロワを始めとした各機器の交換・補修に対して助成することにより、今後、老朽化により増加が見込まれる維持管理面の負担軽減が可能となります。
加えて、本事業は、単独処理浄化槽には適用されないため、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換促進にも資することになります。
3.地域における関係者の連携による協調的な取組を通じた浄化槽の維持管理の向上
浄化槽台帳システム等による設置・維持管理に基づく指導監督等を通じて、浄化槽の適正なストックマネジメントを行うためには、地域における関係者(行政、指定検査機関、保守点検業者、清掃業者、設置者、及び法定協議会等)が連携して、個人設置型を含む浄化槽の維持管理の向上に向けて、協調して取り組む必要があり、本事業により、こうした地域における協調的な取組の活性化が期待されます。
4.法定検査受検率の向上
本事業の対象となる浄化槽については、浄化槽法に定める維持管理が適正に行われていることを、法定検査等により確認する必要があり、本事業を通じて、行政と指定検査機関がより一層連携して、法定検査の受検率向上に取り組むことが期待されます。
まとめ
環境省は、令和4年4月「浄化槽長寿命化計画策定ガイドライン第2版」をとりまとめました。
「浄化槽長寿命化計画」とは、地域の市町村が、浄化槽の改築(浄化槽の機器交換・補修)に係る情報を整理し、費用の見積を行い、方針を決めて進めていくものであり、その策定した長寿命化計画において、浄化槽の設置、使用、更新(入れ替え)等に伴うライフサイクルコスト分析がなされ、浄化槽を入れ替えるより、改築(機器交換・補修)をした方が良いと判断されたものに対し、国が決めた基準額により市町村に助成を行うというものです。
市町村に対し、その手引きとして作成されたのが「浄化槽長寿命化計画策定ガイドライン第2版」です。
公共浄化槽を対象とした場合と、個人設置型浄化槽を対象とした場合の「浄化槽長寿命化計画」の構成について説明しています。
国の浄化槽整備事業には、「公共浄化槽等整備推進事業」と「浄化槽設置整備事業(個人設置型)」があり、市町村によっては、どちらかの事業に力をいれている場合があるからです。
地域の市町村が「浄化槽長寿命化計画」を策定することにより、その地域での「浄化槽長寿命化に基づく浄化槽の改築工事」の在り方が決まってきます。
市町村が定める「浄化槽長寿命化計画」に基づき、公共浄化槽(従来の市町村設置型浄化槽を含む)や浄化槽台帳システム等にきちんと登録し、浄化槽法第11条に基づく法定検査をきちんと受けている浄化槽に対してのみ、個人設置型浄化槽も、市町村が認め、更新よりも改築が良いと判断され、共用開始から7年以上経過している浄化槽の改築(浄化槽の機器交換・補修)に限り、助成金が支払われます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。