太陽光発電の卒FIT後の選択肢

太陽光発電
博士
博士

卒FITを迎えた時、売電価格が安くなってしまうけど、どうしていくのが良いかしら?

助手
助手

出力制限やFIPへの移行などの問題もありますね。

卒FIT後の選択肢

「太陽光発電を始めた頃は、売電単価も高く、設備コストが回収されるまではいかなくても、再生可能エネルギーの普及を通して、地球環境の保護に携わっているという自負がありました。しかし、卒FITを迎えると、売電単価が安くなってしまいます。どうするのが一番効率が良いのでしょう。」

国が太陽光発電を推し進めていた時代、売電単価は48円/kwhでした。
卒FITを迎えると、売電単価は大幅に下がり、7円/kwh~9円/kwhになります。
また、出力制御により、売電できない時間ができ、現在使用しているパワコンも入れ替えが必要になるかもしれません。
では、どうしていくのが正解なのでしょう。

選択肢としては、「少しでも高く買ってくれる新電力会社を探し、契約する」「蓄電池を設置し、発電した電気をすべて自宅で消費する」の2点です。

卒FITとは

卒FIT

国は、太陽光、地熱、水力等の再生可能エネルギーを用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間、地域指定の電力会社が買い取ることを義務づけました。

家庭向け太陽光発電の場合、10年間の固定価格買取義務期間が設けられました。

10年間の固定価格買取義務期間が終わることを、卒(卒業)FIT(固定価格買取制度)と言います。

FIT制度

2009年11月、太陽光発電の余剰電力買取制度が開始されました。
太陽光発電システムの普及を目的に、高額な余剰電力固定買取価格が設定されました。

2009年の一般家庭の余剰電力固定買取価格は、10年間の間、48円/kwhでした。

2012年7月、FIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)が開始されました。
再生可能エネルギーである太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスで発電された電気が対象となります。
太陽光発電の余剰電力買取制度も、FIT法に移行されました。

2012年の一般家庭の余剰電力固定買取価格は、10年間の間、42円/kwhでした。

改正FIT法

2017年4月、FIT法の問題点を改善するために、改正FIT法が施行されました。

問題点は、「再エネ賦課金による国民の負担増」と「発電を始めない事業者の増加」です。

「再エネ賦課金による国民の負担増」

電力会社が再生可能エネルギーを買い取る費用は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」として、電気を使用している全ての家庭の電気代に上乗せされています。
太陽光発電が普及するにつれ、「再エネ賦課金」が増大し、国民の負担が大きくなるため、余剰電力固定買取価格の引き下げが行われることになりました。

「発電を始めない事業者の増加」

FIT制度による余剰電力の固定買取価格は、太陽光パネル等の設備費の価格に基づいて算出されています。
太陽光発電が普及すると、それに伴い太陽光パネル等の設備費が値下げされるため、余剰電力固定買取価格も安くなっていきます。
しかし、余剰電力固定買取価格が高額の時にFIT認定を受け、すぐに稼働せず、設備費が下がってから稼働させる事業者が増加すると、その結果、高い買取価格を維持させることになります。
FIT認定を受けた後、一定期間が過ぎても発電を始めない事業者は、買取期間が短縮される等、事業者に責任を持って発電を行うよう促すルールが設けられました。

卒FIT後の選択肢

継続して地域指定の電力会社に買い取ってもらう

卒FITにあたり、地域指定の電力会社が、固定価格買取義務期間終了後の余剰電力買取価格を発表しました。

現在40円/kwh以上で買い取ってもらっている余剰電力の買取価格は、大幅に下がることになります。

2023年の、固定価格買取義務期間終了後の余剰電力買取価格は、地域で異なりますが、7円/kwh~9円/kwhとなります。

面倒な手続きは無く、そのまま継続するだけですが、あまりメリットを感じません。

少しでも高く買ってくれる新電力会社を探し、契約する

2026年4月、電力全面自由化を受け、さまざまな事業者が電力小売事業に参入しました。

新電力会社ごとにプラン内容や付随する条件が異なりますが、地域指定の電力会社と比べると、固定価格買取義務期間終了後の余剰電力を、11円/kwh~13円/kwhで買い取ってくれます。

蓄電池を設置し、発電した電気をすべて自宅で消費する

余剰電力を売るのではなく、家庭用蓄電池に貯めておき、すべて自宅で消費します。

蓄電池を設置すると、夜間や雨の日等、発電できない時も、蓄電池に貯めた電気を使用できるので、電力会社から電気を購入する必要がなくなります。

太陽光発電をしている家庭の多くは、昼間発電した電力を自宅で使用し、使いきれなかった電力を電力会社に売ります。
そして、夜間は発電できませんので、電力会社から安い深夜電力を購入して使用します。

2023年の固定買取義務期間終了後の余剰電力買取価格は、7円/kwh~9円/kwhです。
2023年の深夜電力購入価格は、13円/kwh~15円/kwhです。
7円~9円で買い取ってもらうより、13円~15円かかる深夜電力分を、自家発電でまかなった方がお得です。

また、災害等で大規模な停電が起こった場合でも、昼間発電した電気を、蓄電池に貯めておけば、いつでも使うことができます。

蓄電池は高額ですが、蓄電池に補助金を出す自治体も増えており、蓄電池への注目が高まっています。

経済産業省 資源エネルギー庁

2018年10月、経済産業省資源エネルギー庁は、「住宅用太陽光設備の買取期間満了に関する情報サイト(どうする?ソーラー)」を公開しました。

そして、2019年11月、スペシャルコンテンツ「太陽光発電利用者は要チェック!『FIT制度』のこれから」を追加しました。

その内容は、以下の通りです。

各家庭で「太陽光発電」が増えた理由のひとつが、「住宅用の太陽光発電等の再生可能エネルギーで作られた電力を、国が定めた価格で電力会社が一定期間買い取る」というルールを定めた「固定価格買取制度(FIT制度)」という支援制度が導入されたことにあります。
この「FIT制度」の前身として、住宅用太陽光発電等による余剰電力を「10年間」、固定価格で買い取る「余剰電力買取制度」が2009年11月に開始されました。

買取期間の満了時期は、制度利用開始時期によって異なります。
買取期間の満了時期は、現在電力を買い取ってもらっている電力会社等から届く「買取期間満了通知」で確認することができます。

買取期間満了後に太陽光発電を活用する選択肢は、大きく分けて二つです。

1. 自家消費

家庭用蓄電池を購入して、太陽光発電でまかなえる電力を増やす。
プラグインハイブリッド自動車、電気自動車を購入し、発電した電気を自動車の動力等に使う。

2. 相対・自由契約

売電できる事業者に対し、相対・自由契約で余剰電力を「売電」する。

2016年4月の電力の小売全面自由化以降に設立された新たな小売電気事業者が、様々なメニューで「余剰電力」の買い取りに名乗りを上げています。
小売業者の中には、地方自治体が出資する「自治体新電力」といわれる電力会社も生まれ、地域で生み出したエネルギーを地域で活用する、電気も「地産地消」できるという新しい選択肢も生まれました。

「自家消費」「相対・自由契約」のどちらが良いか考え、各社の契約条件やサービス内容等を比較し、早めの検討が大切です。

太陽光発電に対する出力制御

出力制御とは

電力の需要と供給を一致させるために、電力の供給を一時的にコントロールすることをいいます。

電力は蓄えられず、余るとエネルギーが無駄になります。

また、電力の需給バランスを一致させないと、電圧や周波数に影響が出て、停電の原因となります。

そのため、電力会社は、電気が余りそうになると、発電事業者に「発電しても買えません」という通知を出します。

出力制御の対象は、太陽光発電だけでなく、火力、水力発電等も対象になります。
「出力制御の優先給電ルール」というものがあり、供給量をコントロールしやすいものから優先的に実施されます。

(出力制御の実施順)
1. 火力発電の出力制御
2. 他地域への送電
3. バイオマス発電の出力制御
4. 太陽光、風力発電の出力制御
5. 水力、原子力、地熱発電の出力制御

出力制御は「再生可能エネルギー特別措置法」で定められているため、発電事業者は、出力制御の実施に同意することを前提条件にFIT認定を受けているため、対応の義務があります。

出力制御は、これまで九州電力でしか実施されていませんでしたが、太陽光発電の導入量が増えたことで、2022年に入って、北海道電力、東北電力、四国電力、中国電力でも行われています。

太陽光発電は、まだ、国が定める導入目標量には達していませんが、晴れた日に発電量が増えてしまい、細かく調整することができないため、発電量が過剰になるたびに出力制御が実施されます。

出力制御のルール

太陽光発電事業者は、管轄の電力会社や電力系統への接続申込をした時期によって「旧ルール」「新ルール(360時間ルール)」「指定ルール」の三つに分類されます。

発電事業者に、どのルールが適用されるかで、電力会社が出力制御を無保証で要請できる日数や時間、出力制御に対応したパワコンの設置義務の有無が変わってきます。

旧ルール

無保証での出力制御上限は、年間30日
出力制御機器の設置義務は、なし(オフライン可)

新ルール

無保証での出力制御上限は、年間360時間
出力制御機器の設置義務は、あり(オンライン)

指定ルール

無保証での出力制御上限は、無制限
出力制御機器の設置義務は、あり(オンライン)

「旧ルール」の対象となるのは、FIT制度が導入された当初(2012年~2015年頃)に運転を開始した発電事業者です。
当時は、出力制御はめったにないといわれ、電力会社が発電事業者に要請できる日数も、年間30日間だけでした。
制御対象の発電事業者も500kw以上の事業者に限られ、出力制御やインターネット接続に対応したパワコンの設置義務もありませんでした。

しかし、太陽光の発電量が増加するにつれ、「旧ルール」では需給バランスの調整が困難になり、2015年に「再生可能エネルギー特別措置法」が改正されました。

2015年1月26日以降に運転開始した発電事業者(一部例外あり)に対しては、年間360時間まで出力制御が依頼できる「新ルール(360時間ルール)」が適用され、インターネット上の出力制御に対応したパワコンの設置が義務化されました。

2015年以降も、太陽光発電事業者が増加し、電力系統の接続可能量をオーバーする可能性が生じたため、国は電力会社に対して、「電力系統への接続申込量が、接続可能量を上回った時点から、それ以降に接続申込をした発電事業者に対して、日数の上限なしで出力制御を要請できる」許可を出しました。
このルールは、国から指定を受けた電力会社だけが対象となるため、「指定ルール」といわれています。

北海道電力や東北電力、九州電力は、「再生可能エネルギー特別措置法」が改正された時点で、接続申込量が接続可能量を上回っていたため、「旧ルール」から、そのまま「指定ルール」に移行しました。

それ以外の電力会社も、当初は「新ルール(360時間ルール)」が適用されていましたが、今では、すべてが「指定ルール」の対象となっています。

・四国電力

2014年12月3日~2016年1月22日までに運転開始した発電事業者は、「新ルール(360時間ルール)」
それ以降に運転開始した発電事業者は、「指定ルール」

・北陸電力

2015年1月26日~2017年1月23日までに運転開始した発電事業者は、「新ルール(360時間ルール)」
それ以降に運転開始した発電事業者は、「指定ルール」

・中国電力

2015年1月26日~2018年7月11日までに運転開始した発電事業者は、「新ルール(360時間ルール)」
それ以降に運転開始した発電事業者は、「指定ルール」

・東京電力、中部電力、関西電力、沖縄電力

2015年1月26日~2021年3月31日までに運転開始した発電事業者は、「新ルール(360時間ルール)」
それ以降に運転開始した発電事業者は、「指定ルール」

従来は「10kw以上500kw未満の旧ルールの発電事業者」は出力制御対象外でしたが、2022年4月1日に施行された「改正再生可能エネルギー特別措置法」によって、「10kw以上500kw未満の旧ルール発電事業者」も出力制御の対象に含まれたため、出力制御対象にならないのは、「10kw未満の発電事業者」のみとなりました。

出力制御の種類

固定スケジュール

あらかじめ電力会社が決めた出力制御日程のことです。
年に1回以上、電力会社が出力制御のスケジュールを発表するので、発電事業者は、そのデータを発電施設のパワコンに直接登録する必要があります。
固定スケジュールは、インターネットを使用しないため、オフライン制御ともいわれています。

更新スケジュール

出力制御の日程が変更された際に、電力会社が発表する、最新版の日程のことです。
出力制御は固定スケジュールによって決まりますが、必ずしもその通りに実施されるわけではありません。
天気予報や日射量予測等をもとに、需給バランスを予測し、状況によっては、「実施の必要なし」「予定よりも短時間で実施する」となることもあります。
変更の可能性がある場合は、3日前までに、電力会社から連絡があり、最終的に当日の2時間前までに決定されます。
変更がある場合、発電事業者は、オンライン上で更新スケジュールを登録しなければなりません。
更新スケジュールは、インターネットを使用するため、オンライン制御とも呼ばれます。

オンライン制御のメリットは、出力制御が未実施や時間短縮となった場合に、売電ロスを最小限にできることです。
現状、市場に出回るパワコンは、ほとんどが通信機能を持っています。
しかし、FIT初期のパワコンの一部は、後付けオプションを含め、出力制御に未対応のものがあります。

2022年度内には、固定スケジュールだけの発電事業者の損失を防げるよう、スケジュールが更新された際に、オンライン制御できる事業者が代理で制御を行う、「経済的出力制御(オンライン代理制御)」が始まります。

再生可能エネルギー電気利用の促進に関する特別措置法

2022年4月1日より、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)」は改正され、「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」となります。

改正概要の中に、「市場連動型の導入支援」というものがあります。
再生可能エネルギー発電事業者の投資予見可能性を確保しつつ、市場を意識した行動を促すため、固定価格で買い取る制度(FIT制度)に加えて、新たに、市場価格をふまえて一定のプレミアムを交付する制度(FIP制度)」が創設されます。

再生可能エネルギー電源を競争電源と地域活用電源に分け、大規模太陽光や風力等、競争力のある電源への成長が見込まれるものは、競争電源としてFIP制度に移行させます。

FIP制度

FIP制度とは、再生可能エネルギー発電事業者が発電した電気を、卸電力取引市場や相対取引で売電した場合に、基準価格(FIP価格)と市場価格の差額を、プレミアム額として交付する制度です。

FITでは、市場取引は免除されていますが、FIPでは、市場取引が基本となります。

再生可能エネルギー発電事業者が、電力需給に応じて変動する市場価格を意識し、市場価格が高い時に売電することにより、収益が拡大できます。
市場価格が安い季節に、発電施設の定期メンテナンスをしたり、蓄電池を活用する等の工夫をし、市場価格の変動に合わせて売電を行うことが必要です。

FITの買い取りに使われるお金は、「再エネ賦課金」として、毎月の電気代に加えて、電気を使うすべての利用者から徴収されています。
FIT制度により、日本の再生可能エネルギーによる発電の普及は拡大してきましたが、「再エネ賦課金」は年々高くなり、国民の負担は増大してきています。
FIP制度のプレミアム額も、国民負担により賄われますが、FIP制度の開始により、入札による競争がさらに進んで、コスト低減が促され、国民負担の抑制につながることが期待されています。

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まとめ

国が太陽光発電を推し進めていた時代、売電単価は48円/kwhでした。
卒FITを迎えると、売電単価は大幅に下がり、7円/kwh~9円/kwhになります。

卒FIT後の選択肢としては、「少しでも高く買ってくれる新電力会社を探し、契約する」「蓄電池を設置し、発電した電気をすべて自宅で消費する」の2点です。

「少しでも高く買ってくれる新電力会社を探し、契約する」
新電力会社ごとにプラン内容や付随する条件が異なりますが、地域指定の電力会社と比べると、固定価格買取義務期間終了後の余剰電力を、11円/kwh~13円/kwhで買い取ってくれます。

「蓄電池を設置し、発電した電気をすべて自宅で消費する」
2023年の固定買取義務期間終了後の余剰電力買取価格は、7円/kwh~9円/kwhです。
2023年の深夜電力購入価格は、13円/kwh~15円/kwhです。
7円~9円で買い取ってもらうより、13円~15円かかる深夜電力分を、自家発電でまかなった方がお得です。
また、災害等で大規模な停電が起こった場合でも、昼間発電した電気を、蓄電池に貯めておけば、いつでも使うことができます
蓄電池は高額ですが、蓄電池に補助金を出す自治体も増えており、蓄電池への注目が高まっています

どちらが良いか考え、各社の契約条件やサービス内容等を比較し、早めの検討が大切です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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